研究課題
基盤研究(B)
初期地球において太陽エネルギー粒子(SEP)の作用により模擬原始大気(窒素・二酸化炭素・水・微量のメタン)から一酸化二窒素およびアミノ酸等の生体関連有機物が生成すること,SEPにより大気中で生じたスピン偏極ミュオンがアミノ酸のエナンチオ過剰を生じる可能性を検証することを陽子線照射実験,ミュオン照射実験などにより検証し,SEPが惑星ハビタブル化に果たした役割を実験的に明らかにすることを目的とする。
若い太陽が高エネルギーかつ高フラックスの太陽エネルギー粒子(SEPs)を放出した可能性が示唆されたことから,生命誕生における SEPsの役割について,加速器を用いた実験の結果をもとに考察した。初期地球大気を模した二酸化炭素・一酸化炭素・窒素・水蒸気の混合気体に東京都市大学のタンデム加速器からの高エネルギー陽子線を照射すると,強い温室効果をもつ一酸化二窒素の生成が確認された。これが暗い若い太陽の下で地球の凍結を防いだ可能性が考えられる。また,アミノ酸前駆体が高効率で生成した。40億年前のSEPsのフラックスの推定値を用いて計算すると,毎年100 メガトン以上のアミノ酸の生成が推定された。これは隕石や宇宙塵などにより地球外から供給されたアミノ酸量の推定値を大きく上回る。なお,このアミノ酸前駆体はアミノニトリルのような従来想定されていたような低分子量のものは少なく,その多くは分子量の大きいものであることが示唆された。このことは,初期地球上での化学進化が従来想定されていたような低分子量有機化合物間の既知の化学反応の組み合わせのみでは説明できないことを示す。地球生物がL-アミノ酸を選択的に用いていることは,生命起源研究において未解決の謎である。本研究ではSEPsが大気分子と衝突する時にスピン偏極ミュオンが生じ,これがアミノ酸のエナンチオ過剰生成に関与する可能性が考えられる。この点について,大強度陽子加速器施設(J-PARC)を用いてDL-アラニンへのスピン偏極ミュオン照射実験を行ったところ,アミノ酸に不斉が生じる可能性が示唆された。以上の結果より,SEPsが地球上での生命の誕生において極めて重要な働きを行ったことが示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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