研究課題
基盤研究(B)
最先端医療を含む広範な医学・生物の分野において,細胞集団から特定の細胞を選別する操作は不可欠となっている.流路形状や流動条件を適切に選ぶことにより,細胞の大きさや変形性の違いに応じて細胞の種類ごとに流路断面を流れる位置を制御することができるマイクロ流体デバイスは,細胞の分離・選別の目的のために極めて有望である.本研究では,細胞のように変形性を持つ粒子が粘弾性をもつ高分子水溶液に浮遊し,微小流路内を流れる場合に,流体から受ける揚力および流路断面における粒子分布を流体力学に基づき実験と数値解析によって調べ,粒子の分離・選別へ応用することを目指す.
流路内層流に浮遊する粒子が慣性に起因する揚力を受けて,粒子の大きさや変形性,流速等に応じて流路断面内の特定の位置を通過する現象はSegre-Silberberg効果として知られており,粒子の分離・選別への応用が期待されている.本研究は,浮遊粒子の変形性や媒質の粘弾性がSegre-Silberberg効果に及ぼす影響を実験および数値シミュレーションによって解析し,その機序を解明することを目的とした.2023年度はマイクロ流体デバイスで一般的に用いられる長方形管の実験と変形粒子を浮遊粒子とした数値シミュレーションを行うとともに,研究のまとめを行った.(1) 実験的研究長方形管を用いてSegre-Silberberg効果の実験を行い,正方形管の場合との比較を行った.条件を満たす市販の長方形管がなかったため,特別仕様で流路を作製した.レイノルズ(Re)数が低い場合,正方形管の場合とは異なり,長方形管では長辺の中央付近の2点のみに集束が見られた.Re数が増加すると,粒子は短辺中央付近の2点にも集束し,さらにRe数が増加すると角付近にも集束した.これらの粒子集束パターンを管断面のアスペクト比毎にRe数と閉塞率(粒子径と管断面の短辺長との比)の関数として整理した.(2) 数値解析変形性をもつ超弾性体モデルを浮遊粒子とする数値シミュレーションを行った.ヒドロゲル粒子の実験で観察された低Re数での管断面中央付近への集束や有限のRe数での管断面の対角線上の4点への集束が再現できた.数値解析と実験の結果との比較から評価したヒドロゲル粒子のヤング率は,別の手法で得られた先行研究の値とほぼ同程度の値となった.モデル粒子の変形性を変化させて計算を行い,粒子の変形性がSegre-Silberberg効果に与える影響をまとめた.
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 11件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (38件) (うち国際学会 14件、 招待講演 7件) 備考 (4件)
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