研究課題/領域番号 |
20H02097
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森田 剛 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (60344735)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2020年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | 強力超音波 / DPLUS / 圧電振動 / 二重放物面反射 / 高周波振動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、従来は数10kHzから100kHz程度に制限されていた強力超音波研究をMHz帯の未開拓領域へと大きく展開するための基礎研究を実施することを目的とする。この実現に向けて、応募者独自の発想に基づく「対向する二重放物面構造による導波路への強力超音波導入機構(DPLUS)”」の基本特性の解明、設計指針の確立、性能向上、応用展開を行う。この研究を通してDPLUSを基盤デバイスとした高周波強力超音波という新学術領域を創成するとともに、医学、工学、理学、生物学における超音波技術の応用研究に大きく貢献していくことが期待される。
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研究実績の概要 |
DPLUSは二重放物面反射を利用して強力超音波を細棒導波路から出力する独自開発したデバイスである。 本年度は、DPLUSの低侵襲治療への応用についての基礎研究として生体組織の熱アブレーションに関する実験を実施した。半径0.6mmで長さ40 mmの石英導波路を利用し、駆動周波数2.26 MHzで導波路先端の振動速度1.5 m/sを計測した。この強力超音波を鶏肉に5秒間連続駆動した結果、組織の変性を確認することができた。このような強力超音波を導波路先端から出力して生体の熱アブレーションを実現したのは世界初の報告である。なお、導波路を1 mとした場合にも同様の熱アブレーションを確認している。 DPLUSから派生したチューブ型DPLUSでは、導波路を円筒形状とすることによって、超音波照射先端部における温度や音圧などのセンシングを可能にする。このチューブ型DPLUSを例にして、導波路の着脱が可能な新しい機構を考案し、その有効性を確認した。この構造は、導波路のみをディスポーザル化や、滅菌処理を可能にするになるなど、実用化に向けて重要な開発である。 本年度はチューブ型DPLUSだけではなく、Fluid型DPLUSという新原理を発案した。これは、従来のDPLUSが主に金属固体中を伝搬することを想定しているのに対して、液体や気体中を伝搬しながら超音波を集束させるものである。このような発想を採用することにより、DPLUSの応用範囲が大幅に拡大されただけではなく、固体界面で反射する際に生じる縦波が横波に変換されることに伴って、伝搬損失が大幅に減少されることも重要である。すでにシミュレーションと実測により、空中超音波や水中超音波が効果的に集束されることを確認し、柔軟物体の非接触弾性率測定に有望であることを実証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
DPLUSに関する基本特性については、その基本原理を把握し、これを利用した強力超音波出力による熱アブレーションを実証した。また、Air-DPLUSやWater-DPLUSといった新しい原理に基づく機構を新たに発案し、その実用化に向けた研究が実施されている。
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今後の研究の推進方策 |
チューブ型DPLUSを利用することで細胞や生体組織に超音波照射を実施する。これにより、超音波が生体に与える影響を定量的に評価することができるようになる。この際、DPLUSが有するマルチモード励振の有効性が十分に発揮できることが期待される。また、チューブ型とすることによって、超音波照射出力をモニタリングすることによって、安定した超音波照射が実現できる。国内外の研究組織と連携しながら、このような新しい分野への展開に挑戦していきたいと考えている。 Air-DPLUSやWater-DPLUSについては、その着想から時間があまり経過していないために、シミュレーションと実験測定から、その基本特性を解明することが重要となる。すでに、その有望性は確認しつつあるので、評価方法の検討に加えて、新しいアプリケーションを模索しながら、その有用性を検証していく予定である。
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