研究課題/領域番号 |
20H02103
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
及川 靖広 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70333135)
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研究分担者 |
池田 雄介 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (80466333)
矢田部 浩平 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20801278)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2020年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
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キーワード | 光学的音響計測 / 偏光高速度干渉計 / 音場 / 音源 / 最適化信号処理 |
研究開始時の研究の概要 |
マイクロホンを用いて音源直近の音場を波動現象として計測することは困難が生じることがある.そこで,偏光高速度カメラを組み込んだ干渉計を用いた光学的音響計測手法を適用し,動画を撮影することにより音場の可視化計測を行う.まず,我々が日常的生活で気になりやすい周波数帯域,音圧レベルの音に対してサブミリオーダの時間空間分解能をもつ可視化計測法を確立する.次に,可視化計測結果に対して物理最適化信号処理やスパース信号処理を適用し音響現象として音源を記述,音源と音場を統一的に扱う手法を確立する.最後に,提案手法を適用した物理計測実験によって様々な音源に対して有効であることを明らかにする.
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研究実績の概要 |
本研究課題では,偏光高速度カメラを組み込んだ干渉計を用いた光学的音響計測手法を適用し音源に近接した空間の音場の計測法を確立し,その振る舞いをミクロに計測可能にする.それを基に音源を音響現象として記述することにより音源と音場を統一的に扱う手法を確立することを目指している. 本年度は、昨年度の成果をさらに発展させ,音源の記述,音源と音場を統一的に扱う手法の確立をめざし,実験によって様々な音源に対して有効であることを明らかにするため,以下のことを実施した.それら成果を学会,論文等で発表した. (1)発音体の記述:キルヒホッフの積分公式を利用することにより,構築したシステムで計測した音圧分布から音源を囲む空間,閉曲面上の音圧と粒子速度を求め,それを利用して音響現象として音源を記述する手法を検討した.また,小型模型を用いた模型実験を行い,模型内音場全体を計測する手法,評価する手法を検討し,その有効性を確認した. (2)空力音の記述:気流内部に設置した角柱やエッジなどから発生する空力音に対して,流れと音の同時可視化計測とそれぞれの成分への分離手法を検討した.音の成分は波動方程式を満たすことや伝搬速度が一定であることに着目し,空間スペクトル領域でのフィルタリング処理や最適化処理などによる分離手法を確立した. (3)スパース最適化信号処理を用いた仮想音源推定:音源の記述である音響現象を生じさせる仮想点音源の集合をスパース最適化信号処理により求める手法を検討した.測定結果,数値計算結果を比較し,提案手法の妥当性,有効性を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の通り本年度は,昨年度の成果をさらに発展させ,音源の記述,音源と音場を統一的に扱う手法の確立,様々な音源に対しての実験を実施しその有効性の評価等に取り組んだ. 具体的には,構築したシステムでの測定結果を利用して音響現象として音源を記述するために,キルヒホッフの積分公式の利用を検討した.キルヒホッフの積分公式に基づき計測した音圧分布から音源を囲む空間や閉曲面上の音圧と粒子速度を求め,これにより音響現象として音源を記述することを可能とした.音場全体を空間的に密に計測,評価することへの応用も考えられ,小型模型を用いた模型実験を行い,拡散性の評価等でその有効性を確認した.一方,その手法の利用に関しての検討はより進める必要性があり,特に深層学習等の技術と組み合わせ今後引き続き検討を加えていく.また,音の成分は波動方程式を満たすことや伝搬速度が一定であることに着目し,空間スペクトル領域でのフィルタリング処理や最適化処理などを用いた計測結果の解析処理手法を確立した.気流内部に設置した角柱やエッジなどから発生する空力音に対して流れと音の同時可視化計測とそれぞれの成分への分離,高速移動する音源から放射する音の可視化計測と解析に有効であることを確認した.各種信号処理を導入することにより計測システムの簡易化にも有効であることを確認しており,引き続き検討を加えていく.さらに,スパース最適化信号処理を用いることにより仮想点音源の集合による音源の記述,それを用いた音場の記述が可能であることを数値計算,測定により検討し,提案手法の妥当性,有効性を明らかにした.音源と音場を統一的に評価する手法に発展させることが可能であり,引き続き検討を加えていく. 以上,当初予定していた実施計画をほぼ達成するとともに,次年度に向けての課題を確認することができた.
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今後の研究の推進方策 |
これまで,計測システムの構築,それを用いた音源の記述,音源と音場を統一的に扱う手法の検討,実験による有効性の評価を実施してきた.2023年度は本年度までの成果をさらに発展させ,引き続き,音響現象としての音源のモデル化,実験と数値計算による評価,実用化及び汎用化と総括を実施する. (1)音響現象としての音源のモデル化:本年度実施した発音体の記述,音場の記述,スパース最適化信号処理等を用いた仮想音源推定とそれによる音場の記述に加え,小型空間内に設置された音源が空間内の音場に与える影響,空間形状が空間内の音場に与える影響などについても検討を加え,音源と音場を統一的に扱う手法の高度化と応用をさらに検討する. (2)実験と数値計算による評価:薄膜トランスデューサ,バイオリン・カスタネット・トライアングル・鐘などの楽器から発生する音,高速移動する音源から発生する音などを対象に計測・評価を行い,様々な音源に対して提案手法が有効性であることを明らかにする.また,低フレームレートでの計測も可能とすべく時空間情報を利用した解析とそれに基づく処理の高度化について検討する. (3)実用化及び汎用化と総括:本研究で構築したハードウェア・ソフトウェアを計測システムとして総合する.自動車分野,鉄道分野,建築分野等への応用を検討し,現実的な問題に対して有効性を検討し,多くの人が利用可能となるべく実用化及び汎用化を目指す.本研究課題の内容をまとめ,得られた知見と計測システムを提示すると同時に,残された課題を明らかにし,本研究の継続的実施を見据えた計画の立案を行う. 得られた結果を取りまとめ,学会発表,論文発表を行う.
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