研究課題/領域番号 |
20H02168
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21040:制御およびシステム工学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
津村 幸治 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (80241941)
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研究分担者 |
大木 健太郎 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40639233)
田中 冬彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (90456161)
大関 真之 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (80447549)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2020年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | 制御理論 / 量子誤り訂正 / 量子情報理論 / 量子統計 / 量子計算理論 |
研究開始時の研究の概要 |
量子誤り訂正の過程が「誤り検出」(量子状態の観測)と検出信号に基づく「誤り訂正」(量子状態への操作)からなることに注目し,誤りをもたらすノイズの影響下にある量子フィードバック制御系の制御問題ととらえ,量子制御理論・量子情報理論・量子計算理論を援用し,高性能な量子誤り訂正システムのための理論・設計手法を開発する.具体的に次の4課題の解決を目指す.課題1:量子誤り検出のためのオンライン状態トモグラフィ,課題2:量子フィードバック制御の制御性能解析,課題3:連続時間量子系に対する冗長化と量子誤り訂正精度のトレードオフ解析,課題4:実機の不均一さを克服する論理ビット構成の機械学習的アプローチ.
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研究実績の概要 |
研究目的達成のため次の4課題の解決を目指す.各課題と2021年度の実施内容を説明する. 課題1:量子誤り検出のためのオンライン状態トモグラフィ(担当:田中,大木,大関)量子誤り訂正で生じる状態トモグラフィの問題を解決するため,具体的な誤り訂正の量子系において可能な操作・測定の条件内で行えるオンライン状態トモグラフィの手法の構築を目指す.そのため2021年度は,平易なモデルで量子適応推定の数値シミュレーションを行った.量子適応推定は理論上は最適とされる一方で,測定を選ぶ上で非線型最適化の繰り返しが必要となる実用上の問題点も明らかになった. 課題2:量子フィードバック制御の制御性能解析(担当:津村,大木)量子系の場合の Maxwell の悪魔とフィードバック制御の性能限界に関する議論を通して,量子誤り訂正システムに対する量子フィードバック制御系の制御性能限界を与えることを目的とする.2021年度は問題の定式化と基礎理論開発を進めた. 課題3:連続時間量子系における冗長化と量子誤り訂正精度のトレードオフ解析(担当:大木,大関,津村)連続時間量子系において情報の冗長化と誤り訂正のフィードバック制御の性能とのトレードオフを解明することを目的とする.2021年度は,一昨年度に提案した符号化と復号化を実現する手法の一般化を開発したが,熱ノイズに対する耐性が無いことも判明した. 課題4:実機の不均一さを克服する論理ビット構成の機械学習的アプローチ(担当:大関,田中) 各量子計算機の持つ特性をデータから学習することにより,情報の冗長化のために各実機にチューニングされた優れた論理ビットの構成法を自動化することを目指す.2021年度はそのための手法として,D-Wave quantum annealer を用いた black-box 最適化手法や,reverse annealing の解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題1については,状態トモグラフィの問題解決のための2021年度初めにおける計画,つまり量子イジングモデルの平均場近似を用いた推定法,低次元化されたカルマンフィルタ,観測量に制限のある推定手法の,状態トモグラフィへの展開を計画していたが,そのうちカルマンフィルタの展開が実現されており,他の推定法の展開が望まれるところである. 課題2については問題の定式化と基礎理論開発を進めてきたが,量子誤り訂正の問題設定との関係について未だ不十分な点があり,2022年度以降のさらなる進展に注力する. 課題3については連続時間量子系における情報の冗長化とフィードバック制御の性能とのトレードオフの解明を目指した問題の定式化と基礎理論の開発について,2021年度はフィードバックによる訂正の理論開発を計画していたが,理論開発している量子符号化・復号化の手法が,新たに熱雑音に対する脆弱性が明らかとなり,その解決に注力している状況である. 課題4については最適化問題求解における実機の振る舞いの特性を解析したが,論理ビット構成法を自動化するための問題の定式化および学習の手法の開発が不十分であり,今後の進展に注力する.
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今後の研究の推進方策 |
課題1においては,より具体的なシステムを想定した条件下で,量子イジングモデルの平均場近似を用いた推定法,低次元化されたカルマンフィルタ,観測量に制限のある推定手法の理論開発を進める. 課題2については,これまで一般的なシステムに関する結果を得ているが,量子誤り訂正の問題設定における結果について詳細な理論解析を進め,2021年度までの研究進捗の遅れを取り戻す. 課題3については,2021年度に判明した量子符号化・復号化手法の熱雑音への脆弱性の問題を解決し,情報の冗長化と性能のトレードオフの解明に注力する. 課題4については2021年度での実機の振る舞いの解析をもとに,計算機のチューニングのための学習法の開発を進める. また課題1~4全体において,各課題間の結果の連携を進める.
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