研究課題/領域番号 |
20H02180
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 山梨県立大学 (2023) 北陸先端科学技術大学院大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
増田 貴史 山梨県立大学, 地域人材養成センター, 特任教授 (70643138)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2020年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 液体 / 半導体 / EBID / シリコン / 微細加工 / 電子線 |
研究開始時の研究の概要 |
Si半導体は固体Siと気体Siに基づくSi工学発展の歴史であった。一方で申請者らは「液体Si」と呼ぶ新物質を創出した。常温常圧で液体、脱水素化により固体Siとなるこの材料は、液体の機能を引き出し活用する新たな学術領域「液体Si工学」を通して、Si科学/産業を新たな段階へ導く。研究の目的は、液体Si工学の基盤となる「液体Si→固体Si」変換機構の解明である。特に非加熱・非真空で進行する電子線誘起型の変換機構を解明し、従来のSi工学で困難とされた「非加熱・非真空のSi製膜、Si直接描画」技術の創製を目指す。半導体Siの歴史を「液体」という新たなフィールドへ先導する初めての挑戦となる。
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研究実績の概要 |
本研究は独自材料である「液体Si」を研究対象とし、電子線(EB)照射で進行する「液体Si→固体Si」変換の実証とその原理解明を目的とした。そして固体Si(ウェハ)や気体Si(シランガス)に立脚した従来のSi工学の延長では困難とされた「非加熱・非真空・ナノサイズ・3次元印刷」のSi製膜技術を創出することを目指した。本年度前半は、昨年度に発生した実験設備の致命的なトラブルの復旧に努めた。年度後半は、ドープ液体Siを用いた「液体Si→固体Si」変換の実験に取り組んだ。複数のドーパント材料を添加した「ドープ液体Si」を用いてLP-EBIDの実験を行ったところ、p型ドーパントにはデカボランが、n型ドーパントには黄/白リンが適していることが明らかとなった。いずれも水素化物であり、分解時に炭素が発生しない。一方でこれまでの加熱による「液体Si→固体Si」変換で用いることが可能なドーパント材料(アラン錯体、ボラン・THF錯体、アミン錯体)は、今回のLP-EBID法では不適切であった。ドーパントの分子構造中に含まれる炭素や酸素が残留してSi膜中に取り込まれる問題や、もしくは膜がポーラスになる、といった問題が確認できた。今後はLP-EBIDのドーパントの分解/反応機構の解明にも取り組んでゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p型およびn型の「ドープ液体Si」を合成し、そのLP-EBIDによりドープSi膜の直接描画を試みた。ドーパント材料には、p型としてアラン・トリエチルアミン、BH3・THF錯体、デカボランを、n型としてリン(黒、赤、黄、白)を用いた。このうちアラン・トリエチルアミンとリン(黄、白)は販売されていないため、自分たちで合成をした。p型ドーパント:アラン・トリエチルアミンを液体Siに添加するとAlH3(アラン)が液体Siと反応し、Alドープが達成できる。しかし材料としての安定性が低く、またLP-EBIDでは残留したトリエチルアミンの炭素が残留するため膜純度が低下した。BH3・THF錯体はボランがルイス塩基として働き、一方で液体SiのSi-Hがルイス酸として働くことで、B-H-Siのブリッジ構造を形成し、それが最終的にSi-Bの挿入反応を起こすことが明らかとなった。この時、THFはSi骨格内に取り込まれることはなかった。しかしLP-EBID後に得られるSi膜がポーラスになることから、THFの存在がSi膜の高密度化の阻害要因になることが明らかとなった。デカボランは液体Siとの反応性が低いため、加熱による「液体Si→固体Si」変換ではSi膜中にはほとんど取り込まれなかったが、今回のLP-EIBDでは問題なくSi膜中への取り込みが確認できた。n型ドーパントでは、黒リン、赤リンはSi膜中への取り込みが確認できなかったのに対し、黄リン、白リンはSi膜中への取り込みが確認できた。後者の持つ反応性の高さが、そのままLP-EBIDでも表れていた。以上のことから、液体Siのドーパントとしてp型にはデカボランを、n型には黄/白リンを用いることで「ドープ液体Si」を得ることができ、そのLP-EBIDでドープSi膜の直接描画が可能なことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
液体SiのLP-EBIDにより、半導体に必要なp型、i型、n型のSiの直接描画を実証した。i型Siの際に用いたシミュレーション解析(DFTやモンテカルロシミュレーション)を、p型とn型にも展開をしてゆく。特にドーパント材料の分解/活性化機構を解析する。また「液体Si→固体Si」変換速度の高効率化、基材との密着性向上を目的とした添加剤の検討にも取り組む。「液体Si→固体Si」変換の起点は基材と液体Siの界面であるため、この界面の制御(界面活性剤の添加や、自己組織化単分子膜による界面処理)により、固体Siの堆積現象がどのように変化してゆくのかを調べる。
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