研究課題/領域番号 |
20H02211
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
藤代 博記 東京理科大学, 先進工学部電子システム工学科, 教授 (60339132)
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研究分担者 |
遠藤 聡 東京理科大学, 先進工学部電子システム工学科, 教授 (60417110)
渡邊 一世 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所小金井フロンティア研究センター, 室長 (20450687)
町田 龍人 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所小金井フロンティア研究センター, 研究員 (50806560)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2020年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | InGaSb / ナローギャップ半導体 / テラヘルツ領域 / 極限性能トランジスタ / 歪みバンドエンジニアリング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、極めて小さい電子有効質量により究極のⅢ-V族半導体材料と期待されていながら特性実証が進んでいなかったSb系トランジスタに対して、InGaSbチャネルの導入と歪みバンドエンジニアリングにより、現実的なラフネス散乱と寄生インピーダンスの下で最も遮断周波数が高く雑音指数が低くなるチャネル構造を最適化設計し、従来の性能を凌駕するテラヘルツ領域極限性能トランジスタを実現する。
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研究実績の概要 |
テラヘルツ領域で動作する極限性能トランジスタの開発は様々なテラヘルツ応用技術への道を拓く喫緊の課題である。本研究は、現実的なラフネス散乱と寄生インピーダンスの下で最も遮断周波数が高く、雑音指数が低くなるチャネル構造は何かという「問い」に対し、InGaSbチャネルの導入と歪みバンドエンジニアリングにより、電子有効質量の観点からチャネル構造を最適化設計し、デバイス試作をして特性を実証する。従来の性能を凌駕するテラヘルツ領域極限性能トランジスタの開発を目的とするが、Sb系半導体に限らず全てのナローギャップ半導体においてエネルギーバンド構造が高速性、低雑音性、低電圧性等に及ぼす影響を包括的に解明することがその根本にある更なる「問い」であり、これによりワイドギャップ半導体とは異なるナローギャップ半導体の新たな学術分野を開拓する。 これまでに、SPICEシミュレータと量子補正モンテカルロ(QC-MC)シミュレータを統合した寄生インピーダンスを厳密に考慮できるデバイスシミュレータを開発した。また成長初期核と界面の制御に加えAlSb/GaSbバッファ層の構造と成長条件を検討し、貫通転位と積層欠陥が低減し電子移動度μeが向上する条件を見出した。さらにQC-MCシミュレータにより構造設計したチャネルにスケーリングを施したInGaSb HEMTの試作を行い、fT=301 GHzの特性を得た。シミュレーションと実験の両面から遅延時間解析を行い、fTの向上には更なる寄生インピーダンスの低減が必要であることを明らかにした。そこで、寄生インピーダンスを低減するための低選択比エッチャントの開発を行なった。 今後は、低選択比エッチャントやダブルリセス構造に最適化したエピ構造、μeをさらに増加させるためのステップバッファ構造やコンポジットチャネル、2次元電子濃度を増加させるためのダブルドープ構造などの検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は新型コロナ感染症の拡大の影響によるエピ成長およびデバイスプロセスの遅延、令和3年度はMBE結晶成長装置のシュラウドリークによるエピ成長の遅延があったが、令和2年度の前半は量子補正モンテカルロ(QC-MC)シミュレータによるデバイス構造設計・特性解析に集中し、後半からは転位低減により電子輸送特性の向上を図るためのAlSb/GaSbバッファ層成長技術の開発とチャネルスケーリングを施したエピウエハを用いたInGaSb HEMTの試作を行なった。その結果、fT=301 GHzの特性を得た。さらにシミュレーションとデバイス特性評価の両面から遅延時間解析を行い、fTの向上には更なる寄生インピーダンスの低減が必要であることを明らかにした。令和3年度はこれらの結果をフィードバックし、SPICEシミュレータとQC-MCシミュレータを統合した寄生インピーダンスを考慮できるシミュレータの開発、AlSb/GaSbバッファ層による転位低減のメカニズムの詳細な解析、寄生インピーダンスを低減するための低選択比エッチャントの開発とこれを用いたInGaSb HEMTの試作を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染状況も改善傾向にあり、またMBE結晶成長装置のシュラウドリークの修理も終了した今年度は、本研究課題の目標の達成に向け、以下の項目について集中的に研究を進める。 (1)SPICE・QC-MC統合シミュレータの開発とInGaSb HEMTの構造設計・特性解析:電子移動度μeをさらに増加させるためのステップバッファ構造やコンポジットチャネル、2次元電子濃度Neを増加させるためのダブルドープ構造を新たに検討し、最適化構造設計、fT、雑音等の特性解析を行う。 (2)InGaSb HEMTのエピ成長・評価:昨年度に開発した寄生インピーダンスを低減するための低選択比エッチャントやダブルリセス構造に最適化したエピ構造を明らかにするため、バリア層厚等をパラメータとして振ったエピウエハを成長しプロセスに供給する。また昨年度は成長初期核と界面の制御に加え新たにAlSb/GaSbバッファ層の構造と成長条件を検討し、貫通転位と積層欠陥が低減しμeが向上する条件を見出した。引き続きエピ膜の高品質化を追求すると共に、シミュレーションによる構造設計・特性解析の結果を反映させながら、μeを増加させるためのステップバッファ構造やコンポジットチャネル、Neを増加させるためのダブルドープ構造のエピ成長の検討を行う。 (3)InGaSb HEMTのデバイス作製・評価:寄生インピーダンスの低減をめざしてバリア層厚等のパラメータを振ったエピウエハを用いて、低選択比エッチャントやダブルリセス構造のプロセス開発およびInGaSb HEMTの試作を行い、評価結果をフィードバックする。これらによりデバイス構造設計、エピ成長技術およびデバイスプロセス技術の高度化を図るとともに、高fT・低雑音なテラヘルツ領域極限性能トランジスタの実現を目指す。
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