研究課題/領域番号 |
20H02238
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22030:地盤工学関連
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
長田 昌彦 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00214114)
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研究分担者 |
竹村 貴人 日本大学, 文理学部, 教授 (30359591)
富樫 陽太 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90753294)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2020年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
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キーワード | 岩盤の浸透特性 / 大気圧変動 / 間隙空気圧 / オパリナスクレイ / 時系列解析 / モンテリ地下研究所 / 岩盤の熱伝導特性 |
研究開始時の研究の概要 |
高レベル放射性廃棄物の地層処分プロジェクトにおける地下水シナリオを適切に設定するためには,掘削影響領域(EDZ)における水理学的及び力学的な岩盤物性とその時間変化を評価することが重要である。 既往の研究でのEDZの領域推定は,弾性波トモグラフィ,比抵抗トモグラフィなどの非破壊探査と原位置透水試験を組み合わせて評価されることが多く,ある時間断面における間欠的なデータ取得であり,透水試験結果と直接的な比較が困難である場合が多い。 そこで本研究課題では,大気圧変動を外力として,EDZの領域推定とその場の浸透特性を原位置岩盤の浸透特性を連続的に,かつ同時に評価する手法を開発することを目的とする。
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研究実績の概要 |
2022年度は,室内実験とモンテリ地下研究所での計測を中心に実施した. 室内実験では,粘板岩と田下凝灰岩のブロック試料を用いたトランジェント法とオシレーション法を,大気圧変動が生じうる圧力範囲で実施し,両ブロックの固有透過度を推定した.オシレーション法で用いた周期は,2021年度の2分,4分,8分の3段階から,4分から88分までの12段階として,位相のずれと振幅減衰の傾向を調べた.その結果,周期が長くなると,振幅減衰の割合は小さくなり,位相のずれも小さくなる傾向を定量的に把握した.また,両試料を市販の定圧下透気試験装置を用いて固有透過度を決定し,上述の2手法で得られた結果と比較した.その結果,両手法とも同じオーダーの固有透過度が得られることが確認された.以上の結果の一部は,2023年度のISRMコングレス(ザルツブルグ)で公表予定である. 上述の室内実験結果を受けて,原位置での浸透特性の変化傾向の把握手法として,サイトの初期固有透過度をトランジェントパルス法で求め,その後の大気圧変動に対する応答から,過渡的な浸透特性の変化を捉えることとし,モンテリ地下研究所での計測の準備を進めた.準備内容は,主に,直径25mmの小孔を用いてトランジェントパルス法を実施するためのメカニカルパッカーの自作,および直径5mmの細孔での気圧計測装置の自作である. 以上を踏まえて,2023年3月にモンテリ地下研究所に赴き,深さの異なる新しい小孔を3本,細孔を1本掘削して原位置でのトランジェントパルス法の適用性を検討した.小孔はトランジェントパルス法を実施したあと,長期計測に向けてシリコンラバーで密封して観測を開始している.細孔は,そのままの状態として,次回訪問時に再度トランジェントパルス法を実施してすることにより,長期的な浸透特性の変化を観測しうるか否かを確認する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染拡大のため, 2年連続でスイス・モンテリ地下研究所での現地作業が実施できなかったが,2022年度には実施でき,長期観測データが得られることが期待できる.コロナ下において,海外サイトの代わりに国内サイト(吉見百穴)を利用して,機器開発をしてきた.その結果の一部は,国内学会誌(応用地質,2023年2月)にて公表した.また上述の実績には記入しなかったが,原位置のトランジェントパルス法では,通常とは境界条件が異なるため,数値解析的な検討も合わせて実施しており,実測値と計算結果を比較可能な段階まで至っている.
以上より,「概ね順調」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の室内実験結果より,一定周期で一定の気圧振幅を与えた場合の位相のずれと振幅減衰比が求まった.2023年度は最終年度として,様々な周期と振幅を有する大気圧変動への応答が,個々の周期での挙動を重ね合わせた挙動として推定しうるかを検討する. 室内実験の結果は,乾燥状態における挙動であり,原位置では水分量が変化する.試しに実施した湿潤状態における試験結果は乾燥状態における挙動とは若干異なっていることがわかっている.この違いを説明するために,飽和養生装置(既設)を用いて,徐々に水分量を変化させつつ,気圧変化に対して位相や振幅がどのように変化していくのかを検討する実験を行う予定である. モンテリ地下研究所での長期観測は,現在壁面が乾燥しにくい「クローズド」な環境で計測を実施している.2023年度後半に現地を訪問した際には,クローズドな環境を作り出しているニッチの扉を開けることで,「オープン」な環境を作り出し,環境条件の違いによる応答の違いを把握する.前段の水分量を変化させた室内実験との比較を通して,飽和状態から乾燥状態に至る過程での,大気圧変動に対する浸透特性の変化傾向の特徴を明らかにし,本研究の結論としてとりまとめを行う.
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