研究課題/領域番号 |
20H02344
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24010:航空宇宙工学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小紫 公也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90242825)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | エネルギー全般 / 航空宇宙工学 / ミリ波 / プラズマ / 推進 / 放電 / ジャイロトロン |
研究開始時の研究の概要 |
高エネルギー電磁ビームが空気中に駆動するデトネーション波の物理の解明は,それを利用するレーザー推進,マイクロ波ロケット,長距離ワイヤレス電力伝送などの工学的応用の実現に必要不可欠である.本研究では,大気放電実験用に新たに建設された世界でも特色のある東大ジャイロトロン発振器を使って,極超音速で伝播するミリ波放電駆動デトネーション波を観測し,プラズマ諸量の空間分布を計測することにより,ミリ波放電駆動デトネーション波伝播の物理モデルの構築・検証を行うことを目的とする.得られた知見を将来のマイクロ波ロケットで想定される実スケールの現象に適用可能な3次元計算コードの開発につなげたい.
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研究実績の概要 |
(1)94 GHz ジャイロトロンを使用した大気ミリ波放電試験:真空管表面への電子スパッタに伴う真空度悪化により、昨年度まで電極電圧45 kV, 繰り返し周波数約1 Hzの作動に制限されていたが、真空管の予加熱や電圧印加を繰り返して真空管表面状態を改善し、電極電圧50キロボルトにて、100 マイクロ秒を超え、繰り返し周波数800 Hzを超える連続発振に成功した。この繰り返しミリ波照射を用いて、第1パルス放電で生じる高温(電離)残留ガスが後続パルスでのミリ波放電進展速度、生成推力インパルス及び放電構造遷移に与える影響を観測した。加えて、分光光学系を用いた計測により、放電構造遷移前後の自発光スペクトル取得に成功した。 (2)デトネーション伝播現象解明のための数値解析: 2次元CFDの熱化学計算において電離速度がガスの振動-並進非平衡状態に依存するモデルを採用することにより、チューニングパラメータを用いることなく上記(1)の進展速度を再現することに成功し、現在論文を執筆中である。また、本計算コードを用いて、繰り返しパルス運転時の推進性能を最大化する推進器形状の検討を行い、一つの例として、吸気弁を非等間隔に配置することで性能が改善する知見を得た。 (3)ミリ波強度分布の測定手法の開発:ミリ波吸収板、感温シートおよびビデオカメラの組み合わせによって、ミリ波パルスのエネルギーとミリ波強度分布の両方を同時、簡便かつ正確に測定する手法を発案し、その開発に成功した。これにより今後ミリ波強度を変数とするミリ波支持デトネーション実験研究を加速度的に行うことができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ジャイロトロンを使用した大気ミリ波放電試験:ジャイロトロンの最大出力が向上したため、ミリ波強度を変数とする集中的な実験研究が可能となり、放電構造が遷移するミリ波強度の周波数依存性に関する知見を得ている。同時にS/N比の観点から複数回測定が望ましい発光分光計測を、効率的に実施できるようになった。さらに、高繰り返しの実験で、残留ガスが後続パルスでの放電進展に及ぼす影響と、残留ガスによる推力低下を抑制する空気吸い込みに関する実験的知見を得つつある。 (2)デトネーション波伝播現象解明のための数値解析:デトネーション伝播現象と空気吸い込み現象の両方を同時に再現する2次元CFDコードを開発中であり、振動-並進非平衡モデルを組み込むことにより、実験結果を精密に再現できるようになってきている。今後本計算コードによる推進器性能予測とジャイロトロンによる性能検証を繰り返すことで、推進器設計の最適化が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ジャイロトロンを使用した大気ミリ波放電試験:ジャイロトロンについては、放電中の真空度悪化を抑制する加熱エージング作業を継続することで、さらなる運転電圧の向上と発振出力の増大を見込んでいる。加えて、超電導磁石に対して高さ方向のアラインメント調整をミリメートルオーダーで行い、発振出力を増大する。また、コンデンサーバンクを追加することで繰り返し発振時の出力低下を抑制する。プラズマ計測については、発光分光法による計測から放電構造遷移機序の解明を目指すとともに、今後は2波長マッハツェンダーを用いて、電子密度の空間分布計測に試みる。 (2)デトネーション波伝播現象解明のための数値解析:今後本コードから予測される推進器性能とプラズマ諸量分布の両方について、(1)の実験による検証を行い、計算モデルの妥当性を評価し、改良を重ねる。最終的には実機スケールまで計算領域を拡大させ、将来のマイクロ波ロケット打ち上げで予想される現象の解明に取り組む。 (3)マイクロ波ロケットの打ち上げ軌道解析:94 GHzジャイロトロン実験で知見が得られたデトネーション伝播現象の周波数依存性をモデル化し、マイクロ波ロケットの打ち上げ軌道解析で考慮する。これにより、より正確で最適なコスト削減のための打ち上げ伝送周波数や伝送光学系の検討を行う。
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