研究課題/領域番号 |
20H02427
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26010:金属材料物性関連
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
松田 光弘 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (80332865)
|
研究分担者 |
赤嶺 大志 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (40804737)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
2020年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
|
キーワード | マルテンサイト変態 / ハフニウム合金 / ジルコニウム合金 / 原子変位機構 / バリアント / ハフニウム基合金 / ジルコニウム基合金 / 自己調整構造 / 変態温度 / 形状記憶特性 / 自己調整 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,形状記憶特性を担う熱弾性型マルテンサイト変態の「原子変位(シェアー・シャッフリング)機構」を精密に解析し制御することで,地球規模の課題解決に向けた新規高温形状記憶合金を開発することが目的である。目標値としては,動作温度 400℃以上,最大仕事量 5~10 J/cm3の達成である。供試材として,チタンやジルコニウムに比べて融点や同素変態点が高く,広範囲にて変態点の制御が期待できることから,ハフニウム(Hf)元素を主体とする。特に熱弾性型マルテンサイト変態の原子変位機構を解明し,それらと形状記憶特性とを関連付ける本研究は,オリジナリティーに溢れ学問的意義も極めて高い。
|
研究実績の概要 |
本研究では新規高温型形状記憶合金の開発を目指しており,本年度は以下の3項目について重点的に調査した。(1)二元系Ti-Hf合金の相変態と組織形成機構の検討:急冷材は室温でhcp構造であり,格子定数は以下のように精密化できた。Ti75Hf25合金(共析組成)a = 0.304 nm, c = 0.480 nm, Ti50Hf50合金 a = 0.311 nm, c = 0.490 nm 組織形成機構について検討した結果,格子不変変形として{1011}双晶を含む,幅数十~数μmの粗大なプレート状バリアント組織が生成した後,その界面から微細な2ペアのバリアントが連鎖的に生成し,全12バリアントにて自己調整していることがわかった。(2)等原子比組成ZrPdおよびZrNi合金マルテンサイト相の自己調整構造:両合金の室温における空間群はCmであり,格子定数も精密化できた。ZrPd合金において,B2構造からCmcm構造への変態の際,{021}Compound 双晶で結合した2つの晶癖面バリアントにてひずみを緩和し,Cmcm構造からCm構造への変態時には,格子不変変形として{001}Compound双晶が導入されることが明らかとなった。ZrNi合金に対してIn-situ加熱実験の結果,約300℃にてCm構造からCmcm構造に変態することがわかった。(3)透過電子顕微鏡法によるTi-Pd-Hf合金における析出物の微細構造解析:Ti8Pd50Hf42合金において,10層周期を有する正方晶-(Hf,Ti)2Pd3相(a = 0.35 nm, c = 1.44 nm)の存在を明らかにした。これは高温での強度向上および形状記憶特性の向上に極めて有用であると考えられる。上記一連の研究成果について,研究論文2本,国内学会発表:3件,学生発表受賞:1件など十分な結果を出すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究3年目となる2022年度では,高温でのマルテンサイト変態点を考慮してHfおよびZr元素に着目し,Ti-Hf合金,Zr-Pd, Zr-Ni合金およびTi50-xPd50Hfx合金を用い,それらマルテンサイト変態点,格子定数,内部組織のバリアント解析など数多くの実験結果が得られた。備品購入したIn-situ 引張TEMホルダーについては,サンプル作製が極めて困難であったが,小型試験片の寸法および接着方法を改善することで問題点を解決しつつある。また研究代表者(松田)が作製した試料を用いて研究分担者(赤嶺)が最先端の収差補正電子顕微鏡を用い,原子レベルでの結晶構造解析をはじめ,GPA(Geometric phase analysis)解析などを駆使して,バリアント界面でのひずみ分布を測定するなどスムーズに連携がとれた。これら結果として,研究論文2件,国内学会発表3件(内学生受賞1件)に纏めており,多大な成果を上げることができた。そのため,順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
備品購入したIn-situ引張TEMホルダーについて,小型試験片の寸法および接着方法を改善することでようやく試験実施の目途が立ち,2023年度ではこれを用いて,応力負荷に伴うマルテンサイトバリアント界面特性についてリアルタイムでの動的観察により評価する。さらに引張試験を実施し,EBSDやTEM観察によりそれら試料の内部構造やバリアントの変化を調査するとともに,引張サイクル試験や熱サイクル試験も行うことで,形状記憶特性向上のための考察を深める。一連の結果を研究論文として投稿し,高温型形状記憶合金開発のための材料設計指針となるよう取り纏める。またコロナウィルスも収まりつつあり,研究分担者(赤嶺助教)とこれまで以上に対面にて密に連携し,研究課題に取り組む。
|