研究課題/領域番号 |
20H02443
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
萩原 学 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (30706750)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2020年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
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キーワード | 熱電変換 / セラミックス / 複合イオン / 熱伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
酸化物熱電変換材料の実用化に向けて、300 ℃前後の中温域での熱伝導率の大幅な低減が不可欠である。本研究では結晶学的に等価なサイトを価数の異なる2種類のカチオンが占めた「複合カチオン」を利用したフォノン散乱の増強により、材料の電気伝導性を保ちつつ熱伝導を抑制する。液相合成法を駆使した材料探索と逆モンテカルロ法を用いた局所構造解析によって複合カチオンエンジニアリングに基づく熱電変換材料の設計指針を構築し、中温から高温にかけての幅広い温度域で優れた熱電特性を示す材料を創製する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、価数の異なる2種類のカチオンからなる“複合カチオン”を金属酸化物半導体に導入することで、フォノン散乱の増強によって熱伝導率を大幅に低減し、中温(300℃程度)から高温(900℃程度)までの幅広い温度範囲で優れた特性を示す熱電変換材料を創製することである。昨年度に実施した逆モンテカルロ法を用いたX線原子対相関関数の解析により、Aサイト複合ペロブスカイト型酸化物である(La1/2K1/2)TiO3について、既存材料であるSrTiO3と同等の高い電気伝導性が実現できる可能性が示唆された。そこで2022年度は、固相反応プロセスにおいて粒径の大きく異なる2種類の酸化チタン粒子を原料として用い、さらに粒子の粉砕条件を変化させることでグレインサイズの異なるNbドープ(La1/2K1/2)TiO3セラミックスを作製し、それらの電気伝導特性を評価した。その結果、グレインサイズを154 nmから238 nmへと増大させることによって、電気伝導率が10倍以上も飛躍的に向上した。一方で、グレインサイズの増大によってゼーベック係数は大幅には変化せず、その結果としてゼーベック係数の二乗と電気伝導率との積で表されるパワーファクターも大幅に増加した。したがって、粒界の抵抗が(La1/2K1/2)TiO3セラミックスの電気伝導性を劣化させている主要因であり、これを低減することでさらなる熱電変換特性の向上につながる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究によって(La1/2K1/2)TiO3セラミックスの電気伝導性の低減要因を明らかにするとともに、さらなる特性向上への可能性を示すことができた。この結果を受けて、残りの研究期間内で優れた熱電変換材料を創製することが十分可能であると見込まれることから、プロジェクトはおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の結果より粒界の抵抗が(La1/2K1/2)TiO3セラミックスの電気伝導性劣化の主要因であることがわかった。そこで、(La1/2K1/2)TiO3粒子とグラフェンを混合した後に成形・還元焼成することで粒界にグラフェンを導入した試料を作製する。作製したセラミックスの電気伝導率、ゼーベック係数、熱伝導率の温度依存性を測定し、複合カチオンによる熱伝導率の低減効果と、グラフェンとの複合化による粒界抵抗の低減効果を確かめる。また、複合カチオンエンジニアリングのペロブスカイト型構造以外への適用例として、タングステンブロンズ型構造を有するニオブ酸系のセラミックスについても作製と評価を試みる。
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