研究課題/領域番号 |
20H02607
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
本多 周太 関西大学, システム理工学部, 准教授 (00402553)
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研究分担者 |
安藤 裕一郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50618361)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2020年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
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キーワード | 磁化反転 / スピン軌道トルク / マイクロマグネティクスシミュレーション / マイクロマグネティクス / スピンホール効果 / 純スピン注入 / ドリフト拡散法 / スピン注入磁化反転 / スピン軌道トルク(SOT) / 多方向注入 |
研究開始時の研究の概要 |
強磁性体の磁化の高速・低消費電力制御は,不揮発性で低待機電力な磁気メモリの応用化のための重要な課題である。非磁性金属リードを流れる電子スピンをスピンホール効果によって強磁性体へ注入し,磁化にトルクを与えるスピン軌道トルク法(SOT法)が注目されている。書き込みリード線を2本に増やして複数の向きのスピンを注入することで従来のSOT法と比較して消費電力で高速に磁化を反転できる高速磁化反転法が提案された。しかし,これらの方法において注入スピンの空間分布など不明な点が多い。そこで, 理論的視点からスピンの振る舞いを明確にし, 高速磁化反転法の最適化を行う。また,実験的に高速磁化反転法を実証する。
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研究実績の概要 |
スピン軌道トルクを用いた磁化反転の高効率化に向けて補助書込SOT法を用いた多方向からのスピン注入による磁化反転の効果やスピンの挙動を明らかにすることが本研究の目的である。本年度は,数値シミュレーションや理論による考察と実験とで分担して研究した。数値シミュレーションにおいては,高速磁化反転に向けて,高効率はSOT注入法の検討や,現実の系に近い数値シミュレーションを目標に研究を行なった。実験においては,補助書込SOT法と従来のSOT法による磁化反転を比較しながら実験を行ない,より高速な磁化反転の実験実証を目指した。超真空成膜装置,微細加工装置,高周波プローバや2端子出力パルス生成器を用いることで,磁化反転時間の検討を可能した。これにより補助書込SOT法が従来のSOT法よりも,同じ消費電力で比較して高速に磁化反転可能であることが明らかになった。磁化反転の数値シミュレーションにおいては,熱の効果(温度に依存した磁気モーメントの方向の揺らぎ)を導入することで,補助書込みSOT法がさらに高速な磁化反転を起こすことが明らかになった。熱揺らぎと反転時間の関係について発表した。また,薄膜だけでなく厚膜においてもSOT法によって高速な磁化反転が起ることが明らかになった。この結果から,SOT法を用いた新たな磁気メモリデバイスの提案を行い,また,厚膜における磁化反転を発表した。厚膜や数百ナノメートルサイズの薄膜においては,磁化反転過程で複数の磁区が生成されることが数値シミュレーションによって示された。この磁区の堺である磁壁の長さの検討を従来よりも高精度な近似を用いて行ない,解析結果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,補助書込みSOT法での高速磁化反転・低消費電力磁化反転をめざしている。より現実に近い数値シミュレーションと実験実証が重要である。本年度には,パーマロイ薄膜において補助書込みSOT法を用いて従来のSOT法よりも高速な磁化反転が実験実証された。この実験実証成果は,昨年度得られた低床品電力な磁化反転に続き,補助書込みSOTの法のデバイス応用や学術的価値を示す重要な成果である。さらに,熱揺らぎを取り入れた磁化反転数値シミュレーションにおいては熱の効果でより高速な磁化反転が起ることが判明するなど,数値シミュレーションと実験実証の双方から順調に研究が進展している。スピンホール効果によるスピン注入を用いた磁化反転を応用することで薄膜だけでなく厚膜の磁化反転も高速化されることが数値シミュレーションにより示され,本書込み法の応用範囲を広める成果も得られた。このように,おおむね順調に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
補助書込みSOT法によるさらなる高速化にむけて数値シミュレーションと実験を進める。数値シミュレーションにおいては,今年度までと同様の数値シミュレーション方法であるランダウ-リフシッツ-ギルバート方程式に基づいたマイクロマグネティクスシミュレーションに,熱の効果やドリフト拡散法で得られたスピン流の効果に加え,また,実験において高速・低消費電力な磁化反転が得られたため,実験結果と数値シミュレーション結果を比較し,数値シミュレーションに用いる物理パラメータを検討し,より現実に近い数値シミュレーションを行なう。実験においては,SOTを生成する重金属リードの材料を変えて補助書込みSOT法磁化反転の実験を行ない,磁化反転の材料依存性を検討し,さらなる高速磁化反転をめざす。超真空に対応した成膜装置,微細加工装置,高周波プローバおよび2端子出力パルス発生器を用いてパルス電流を印加することで,磁化反転実験を行なう。最後にシミュレーションや実験で得られた成果をまとめ,発表する。
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