研究課題/領域番号 |
20H02613
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山末 耕平 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (70467455)
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研究分担者 |
加藤 俊顕 東北大学, 工学研究科, 准教授 (20502082)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2020年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 走査型非線形誘電率顕微鏡 / 走査型非線形誘電率ポテンショメトリ / 界面物性 / キャリア物性 / 原子層材料 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,グラファイトなど層状材料を数原子層以下まで薄くした原子層材料が,優れたキャリア輸送特性や新奇な電子・光物性のために注目を集め,そのデバイス応用が期待されている.本研究では,原子層材料・デバイスの研究開発を加速するため,キャリア物性,界面物性,結晶欠陥の評価をナノ・原子スケールで行える顕微法を走査型非線形誘電率顕微鏡/ポテンショメトリ(SNDM/SNDP)と呼ばれるプローブ顕微鏡を用いて実現する.さらに,評価物性がデバイス特性に及ぼす影響の評価や特性劣化機構解明,デバイス作製プロセスの改善指針策定までを一貫して行える原子層デバイスのデバイスシミュレーション環境を確立する.
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研究実績の概要 |
本課題では,原子層材料・デバイスのキャリア物性,界面物性,結晶欠陥などをナノ・原子スケールで評価できる走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)の研究を進めている.研究実績は次の通りである.(1) 原子層半導体材料・デバイス観察に適したボックスカー平均法に基づく間欠接触SNDMに関する論文を発表した.既存の間欠接触SNDMはコンタクトモード原子間力顕微鏡を併用した従来型のSNDMに比較して,探針走査にともなう水平方向の力を大幅に低減可能である一方,信号-雑音比が大幅に低下する欠点があった.本論文では,ボックスカー平均法に基づく間欠接触SNDMの理論を構築し,信号-雑音比を間欠接触のデューティー比の平方根の逆数倍まで改善できることを示した.また,同理論に基づいて検出系のパラメータを定量的に決定し,信号-雑音比を最大化できるようになった.(2) 時間分解SNDMおよび絶縁膜コート探針を併用することで,原子層材料・デバイスの局所容量電圧(CV)特性測定,局所DLTS(Deep level transient spectroscopy)を行えるようにした.絶縁膜コート探針で測定を乱す要因となる試料への電荷注入を抑制することで,原子層材料が持つ固有の半導体物性を反映する局所CV特性や欠陥密度分布像を得ることが可能になった.構築した測定系を用いて,異種原子層材料を積層させた原子層ヘテロ構造の局所CV特性測定が行えることを明らかにし,国際会議にて報告した.機械剥離および転写により,MoS2/h-BN積層構造をSiO2基板上に作製し,MoS2の局所CV特性を下地にh-BNがある部分とない部分で測り分けることに成功した.下地にh-BNがある方が印加電圧の掃引に対して急峻な静電容量変化を示した.これはh-BNによる界面品質の改善を示唆する結果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高い信号-雑音比と原子層材料・デバイス試料の損傷防止を両立するボックスカー平均に基づく間欠接触SNDMに関する定量的な理論が構築できた.また,時間分解SNDMと絶縁膜コート探針を用いた局所CV特性測定や局所DLTSの測定系が構築でき,異種原子層材料を積層させた原子層ヘテロ構造試料において,異なる下地を有する部分を局所CV特性測定で測り分けることに成功した.以上の実績からおおむね満足する進捗が得られていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
開発したボックスカー平均を用いた間欠接触・大気中動作SNDMや絶縁膜コート探針,時間分解SNDMに基づく局所容量-電圧(CV)特性測定・局所DLTSを用いて原子層ヘテロ構造など様々な原子層半導体材料・デバイスの物性評価をナノスケールで行う.また,測定結果の解析のため,半導体デバイスシミュレータを援用したSNDM観察シミュレータの作成を引き続き進める.
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