研究課題/領域番号 |
20H02649
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
矢花 一浩 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (70192789)
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研究分担者 |
植本 光治 神戸大学, 工学研究科, 助教 (90748500)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | レーザー科学 / 第一原理計算 / 時間依存密度汎関数理論 / 超高速現象 / 高強度場科学 / 非線形光応答 / 量子流体模型 / 高次高調波発生 / 斜方入射 / 2次元物質 / 可飽和吸収 / メタ表面 / アト秒科学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、物質科学の第一原理計算手法に基づく新しい光物質科学の計算方法を開発して、極限的なパルス光とナノ構造体の相互作用で起こる多様な非線形光応答現象を理解することを目的とする。計算手法は私たちのグループで開発を進めているオープンソースソフトウェアSALMONに取り入れ、スーパーコンピュータを用いて計算を行なう。特に時間・空間・場の強度という3つの軸を自在に操作することで可能となる特徴的な光応答を探求し、それを活かした新奇な光デバイス原理に繋がる知見を獲得することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、物質科学の第一原理計算に基づく新しい光科学計算手法を発展させ、光のパルス長と強度そして物質のサイズを組み合わせて可能になる多様な非線形・非局所光応答現象を解明することを目的としている。本年度、以下に述べる進展があった。 金属ナノ粒子の光応答に現れる量子現象に対して、昨年度量子流体模型に基づく記述を発展させた。これを用いて、ジェリウム模型に基づき金属ナノ粒子の持つ3次の非線形光応答に関する分析を行なった。これまでナノ粒子の表面における量子効果である電子染み出しが、線形プラズマ応答に与える影響に関心が持たれているが、本研究では3次の非線形光応答に対しても、表面の量子染み出しが重要な効果をもたらすことを明らかにした。 昨年度、高強度パルス光が物質表面に斜方入射する問題を1次元的な伝搬の方程式に変換し、第一原理計算に基づく光伝搬計算が可能になる方法を開発した。本年度はこの方法をシリコンの表面に対して応用し、無反射となるブリュスター角が光の強度と共にどのように変化するかを明らかにし、方法論といくつかの例を示した論文を出版した。 高次高調波発生は、高強度パルス光が誘電体に照射する場合に普遍的に見られる現象であり、紫外光や軟X線パルスを発生させるデバイス原理として注目されている。固体からの高次高調波発生では、物質とレーザーの極めて多くの要素が関わることから、統一的な描像を得ることが容易ではない。本研究では第一原理計算に基づき、パルス長による高次高調波発生の変化、有限温度効果による原子位置の揺らぎの効果、薄膜中を伝搬することの効果と反射波・透過波に現れる高次高調波の特徴などを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、高強度なパルス光と物質の相互作用に関して、時間(超短パルス)、空間(ナノサイズ)、場の強度(高強度光)を制御することにより起こる新たな非線形光応答現象を探索し解明することを目標としている。本年度は、金属ナノ粒子における表面染み出しが非線形光応答に与える影響を明らかにしたこと、高強度パルス光が斜方入射する場合について、理論と計算法を構築し論文として出版したこと、固体からの高次高調波発生におけるパルス時間長、原子配置の揺らぎ、ナノメートルからマイクロメートルのスケールにおける伝搬の効果を明らかにしたことなど、本研究の目的に関わる多様な発展が得られたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、時間・空間・場の強度の軸のうち複数が関わる現象の解明に取り組む。金属ナノ粒子に関しては、これまで取り組んできたジェリウム模型に基づく記述に加え、イオン配置を考慮した第一原理計算との比較を行い、非線形プラズモニクスに対する表面効果とバルク効果の役割を明らかにしたいと考えている。これまで様々な厚さの薄膜から発生する高次高調波発生の系統的な分析を行なってきたが、このような分析をより幅広い光強度や、誘電体以外の金属、半金属などさまざまな物質に広げ、弱い光が入射した場合に起こる物質に固有の光応答から、どのような物質でも普遍的に見られる高強度パルス光に対するプラズマ反射まで、統一的な描像を得たいと考えている。斜方入射で起こる非線形光応答に関して、2次元原子層物質を記述する理論と計算法の開発や、物質表面に発生する表面プラズモンの特徴について理解を進めたいと考えている。
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