研究課題/領域番号 |
20H02683
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31020:地球資源工学およびエネルギー学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中塚 晃彦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (80294651)
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研究分担者 |
大川 真紀雄 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (60263670)
藤原 惠子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助手 (50253175)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2020年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
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キーワード | 単結晶X線構造解析 / マイクロポーラス結晶 / イオン交換 / 放射性元素除去剤 / X線結晶構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、福島第一原発事故で生じた汚染水に含まれている放射性元素(Cs,Sr)を高効率に回収・除去するための放射性元素除去剤を材料設計する結晶学的指針の構築を目指した研究である。マイクロポーラス結晶である種々のゼオライト化合物や多孔性珪チタン酸塩を取り上げ、X線結晶構造解析から得た細孔内での交換性陽イオン(Cs,Sr)や水分子の結晶学的配置とCs・Sr交換特性との関係から、交換性陽イオンに作用する原子間相互作用を系統的に調べ、イオン交換特性の支配因子を明らかにする。
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研究実績の概要 |
東日本大震災による福島第一原発事故で生じた汚染水は、現在でも増え続け、深刻な問題となっている。汚染水に含まれる放射性元素のうち、原発事故による放出量が多く半減期が長いCsとSrを高効率に回収・除去するためのイオン交換剤の探索・開発が切望されている。本申請課題は、高効率な放射性元素除去剤を材料設計する結晶学的指針の構築を目指し、マイクロポーラス結晶である種々のゼオライト化合物や多孔性チタン珪酸塩を取り上げ、Cs・Sr交換特性と細孔内での交換性陽イオン(Cs,Sr)や水分子の結晶学的配置との関係から、交換性陽イオンに作用する原子間相互作用を系統的に調べ、イオン交換特性の支配因子を明らかにすることを目的とする。 今年度は、福島第一原発で実際に使用されている天然ゼオライトの一種であるチャバサイトのCs交換特性を調べ、Cs交換チャバサイトとその単結晶X線構造解析を行った。さらに、このCs交換チャバサイトにおける水分子の脱離挙動を調べることによって細孔内の水分子とCsイオンとの相互作用の大きさを知るために、高温下(200 ℃までの温度)での単結晶X線構造解析を行い、席占有率から求めた各席の水分子数と交換性陽イオン数の温度依存性を検討した。その結果、Csイオンは2つ陽イオン席(Cs1席、Cs2席)に分布していることが分かった。室温ではCsイオンの約95%が8員環窓の中心に位置しているCs1席を占有していること、高温では配位している水分子の脱離に伴い、細孔内部に位置しているCs2イオンのすべてがCs1席に移動することから、CsイオンはCs1席への極めて高い席選択性をもつことが分かった。平均結合距離はイオン半径から期待値とよく一致していることから、8員環窓の隙間はCsのサイズにジャストフィットしていることを示しており、これが良好なCs交換剤である要因の1つであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高エネルギー加速器研究機構の放射光施設や広島大学の共同利用設備を利用したX線回折実験を当初予定していたが、コロナ禍による出張制限のため、実験計画が大幅に遅延した。さらに、X線発生装置消耗品など本研究課題の目的達成のために不可欠な備品購入の時期もコロナ禍の影響により遅れた。これらの理由から、本研究課題の現在までの進捗状況はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後チャバサイトにおいて、Csに次いで問題視されている放射性元素Srに注目し、Sr交換量の異なる試料を系統的に作製し、Srに対するイオン交換特性を調べる。さらに、スティルバイトなど他のゼオライト化合物や優れたイオン交換剤として期待されている多孔性チタン珪酸塩にまで研究対象を広げ、イオン交換特性を調べるとともに、温度を変数としたX線結晶構造解析を行い、交換性陽イオンの水和状態の温度依存性および脱水挙動とそれに伴う陽イオン移動の詳細を明らかにする。
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