研究課題
基盤研究(B)
本研究では、電磁場のカイラリティの尺度を表す保存量である「Optical Chirality」の勾配を起源とする光学力による鏡像体選択的な光学捕捉技術により、水溶液中の分子クラスターを鏡像体選択的に濃集し鏡像対称性の破れを伴う結晶核形成を人為的に誘起する。誘電体ナノ構造体のMie共振により発生するOptical Chiralityの増強された近接場を鏡像対称性の破れた外場とみなし、これを印可することで本来熱力学的に等価な結晶鏡像異性体を熱力学的に区別する。これにより、相転移を記述する上で基本的な量である化学ポテンシャルにカイラリティの概念を導入する。
これまでの研究で、近赤外円偏光レーザー照射により局在型表面プラズモン共鳴を励振した三角形金ナノ粒子の三角形三量体ナノ構造体を核形成サイトとして塩素酸ナトリウム(NaClO3)キラル結晶化を誘起すること大きな結晶鏡像異性体過剰率が得られることが報告されている。本研究では、有限時間領域差分法に基づく電磁場解析により近接場のOptical Chirality増強場に曝されたキラル結晶クラスターに働く鏡像体選択的光学力を見積もり、その大きさが結晶核形成のカイネティクスに有意に働く可能性を示した。また、誘電体ナノ構造のMie共鳴の利用を見据えたSiナノ構造体の作製プロセスを確立した。
これまで不明であった、金属ナノ粒子及びナノ構造体の円偏光による局在型表面プラズモン共鳴励振下でのNaClO3キラル結晶化における結晶鏡像異性体過剰のメカニズムに対し、Optical Chiralityの空間勾配に起因する鏡像隊選択的光学力の観点から検討指針を与えた。これは、未開拓な電磁場の保存量の物質科学への応用可能性の一つを示すだけでなく、光ピンセットに代表されるような光を用いた物質操作の新たな可能性を示す内容である。近接場のキラリティは広範な学術領域に関わりがあり、本研究の成果は例えばスピントロニクス、生命科学、ナノ物質科学など広範な学術領域に波及効果がある。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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