研究課題/領域番号 |
20H02697
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
稲見 栄一 高知工科大学, システム工学群, 准教授 (40420418)
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研究分担者 |
阿部 真之 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (00362666)
勝部 大樹 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (00831083)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
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キーワード | 走査プローブ顕微鏡 / 原子・分子物理 / 化学結合 / 表面・界面物性 / 機能性ナノ材料 |
研究開始時の研究の概要 |
2原子間の相互作用は最も基本的な化学結合であり、その理解は、物質存在様式を根源から解明するという点で、物質科学全般に跨る基礎学術課題である。また2原子の結合を計測・制御できれば、機能性材料の開発で、原子レベルから有用な指針が得られる。 本研究では、走査プローブ顕微鏡と超短電圧パルス制御技術を融合して、2原子の化学結合に伴う分子軌道形成過程をエネルギースケールで検出可能な超短電圧パルストンネル分光装置を開発する。さらに本装置を駆使して、以下の基礎学術・応用研究を展開する。 1. 化学結合を価電子の挙動に基づき原子レベルで解明 2. 機能性材料表面の原子選択的な化学活性度を評価可能な基盤計測技術を開拓
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研究実績の概要 |
本研究では、原子間力顕微鏡/走査トンネル顕微鏡の複合装置(AFM/STM)と超短電圧パルス制御技術を融合して、2原子の化学結合に伴う分子軌道の形成過程をエネルギースケールで追跡可能な超短電圧パルストンネル分光法(Ultra-Short Voltage Pulse Scanning Tunneling Spectroscopy; USVP-SPS)を開発する。 令和4年度は、令和3年度に構築したUSVP-SPS制御システムを活用して、Si(111)-(7x7)表面を対象とした局所分光測定の精度向上化、および当初の目的であった、2原子の化学結合に伴う分子軌道形成過程の計測を進めてきた。以下に、本年度の実績をまとめる。 (1)ソフトウェアの改良・およびコントローラ-システム本体(AFM/STM)間の再整備をおこない、昨年度の課題であったトンネル電流電圧曲線データのS/N比を向上させることに成功した。これにより、計測データからSi(111)-(7x7)表面の局所状態密度の情報を抽出することに成功し、それが先行研究の結果を再現できていることが確認できた。 (1)パルス印可の遅延時間を変化させて(1)と同様の計測を行った。その結果、計測でえられる2つのデータ局所状態密度の特徴的差異を見出すことができた。現在、この結果は、探針先端原子と試料先端原子の間に形成される化学結合に伴う電子状態の変化を反映、つまり、本研究の目的である2原子間の化学結合に伴う分子軌道形成過程をエネルギースケールで追跡したものだと考察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の課題であったS/N比の向上は、USVPーSTS制御装置(ソフトウェア)の改良により局所状態密度を解析できるにまで改善された。また、本年度は、異なる探針試料間距離で計測した局所状態密度に差異を確認できたことから、本計測原理(分子軌道形成過程をエネルギースケールで計測)の妥当性を示すこともできた。一方で、分子軌道形成過程をエネルギースケールで精密に追跡、および議論するには、計測で得られた状態密度ピークのエネルギーを正確に評価する必要があり、この観点で、計測データの精度・S/N比の向上化は、来年度も引き続き継続する必要があると考えてる。以上、本年度の進捗は、来年度への課題がのこされているものの、当初の研究計画を部分的に実現できたと考え、区分を「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、本研究で構築したシステムを活用して、Si(111)-(7x7)表面を対象とした局所分光測定の精度向上化を進めてきた。その結果、ソフトウェアの改良により、トンネル電流電圧曲線データのS/N比向上化に成功した。しかし、得られたデータから局所状態密度を評価するには更なるS/N比の向上化が必要であることも明らかとなった。そこで本年度は、昨年度に得られたデータの解析・考察と併せて、測定の再現性・さらなる高精度化を目指す。また、昨年度実施できなかった極低温環境における局所分光測定(熱揺らぎの低減化)についても検討を行う。さらに本装置の適用範囲を検証することを目的に、他の材料を対象とした測定を進める。対象としては、本研究計画で予定していた金属酸化物表面・および参考試料として金表面を対象とした測定を計画している。
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