研究課題/領域番号 |
20H02708
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉田 幸大 京都大学, 理学研究科, 特定准教授 (10378870)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2020年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
|
キーワード | プロトン伝導 / 全固体プロトン整流素子 / 多孔性配位高分子 / プロトン-電子相関 / プロトン-電子混合伝導 / 金属-有機構造体 / 配位高分子 / ヘテロ接合膜 / 次元クロスオーバー構造変換 / 外場応答 / プロトン整流 / プロトン共役酸化還元反応 / 整流性 / 分子運動 / 層状複水酸化物 / プロトン共役電子移動 / イオン液体 |
研究開始時の研究の概要 |
MOF細孔内におけるプロトン伝導の外場(電場、CO2導入、温度など)制御(課題1)ならびに整流挙動(課題2)を実現する。ホスト物質であるMOFの細孔(細孔径、開口径、次元性)・配位子(親水/疎水性、pKa/pKb、酸化還元能)とゲスト物質であるイオン液体(サイズ、対称性、pKa/pKb)の化学特性を検討しながら合目的的に物質開発を推進し、細孔というナノ空間におけるプロトン伝導の高速化・外場制御・整流性を体系化する。
|
研究実績の概要 |
プロトン輸送を自在に制御するプロトニクス技術の確立において、プロトンの整流性、すなわち一方向性輸送の実現は必須の課題である。プロトン伝導性配位高分子(CP)と水酸化物イオン伝導性層状複水酸化物(LDH)の自立型メンブラン(free-standing membrane)から成るヘテロ接合膜を作製し、それをPd電極で挟むことにより、既報値(約100)を上回るプロトン整流比(200以上)を実現した。さらに、このプロトン伝導性CPメンブランは優れた曲げ特性を有しており、湾曲状態においても高プロトン伝導性を保持していることを見出した。 伝導プロトン-伝導電子相関の実現ならびに制御において、強いプロトン-電子相関を有するπ平面金属錯体の設計指針の抽出は不可欠である。本年度は、レドックス活性なN,S-ドナー配位子から成るπ平面Pt(II)錯体のcis体とtrans体の単離に成功し、金属種の交換(Ni(II)/Pt(II))に比べcis-trans異性化の方が顕著なプロトン-電子相関変化を示すことを密度汎関数理論(DFT)計算から明らかにした。さらに、有機溶媒中でのcis体からtrans体への異性化にも成功した。 Cu(II)イオンを含む二次元CPにおいて、水との接触により層状構造を保持したままシート内構造が劇的に変化することを見出した。この構造変換により、Cu(II)二量体の解離に起因する磁化率上昇に加え、配位溶媒の配列構造の変化に伴う4桁以上のプロトン伝導度の向上を観測した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プロトン伝導性CPと水酸化物イオン伝導性LDHから成るヘテロ接合膜を用いて、全固体プロトン整流素子としては最高のプロトン整流比(200以上)を達成した。従来用いられてきた有機ポリマーヘテロ接合膜に比べ設計性が高く、両メンブランの化学置換や化学修飾による整流比のさらなる向上が期待できる。また、このプロトン伝導性CPメンブランは優れた曲げ特性を有し、湾曲状態においても優れたプロトン伝導性を保持することから、フレキシブル素子への応用展開の可能性も包含している。 プロトン-電子相関の制御を指向した金属錯体の開発研究に関しては、特にレドックス特性を有するN,S-ドナー配位子から成るNi(II)錯体において、実験・計算両面から優れたプロトン-電子相関を確認した。さらに、同配位子から成るPt(II)錯体において、cis-trans異性化によるプロトン-電子相関変化が、中心金属の置換(Ni(II)/Pt(II))よりも顕著であることを見出した。 プロトン伝導と電子伝導の双方を有する混合伝導性分子性固体の合目的的な開発も推進した。ナフトキノン部位を有するジチオレン配位子を用いて、中性分子性結晶としては最高レベルのプロトン-電子混合伝導性(アンバイポーラ伝導度)を有するπ平面Pt(III)錯体の開発に成功した。さらに、パドルホイール型Pt(II)二核錯体から成るプロトン伝導性チャネルに部分酸化TTFを導入することにより、新規プロトン-電子混合伝導体の開発にも成功した。 水との接触によりシート内構造が劇的に変化する二次元CPの開発に成功した。Cu(II)二量体の解離に起因する磁性変化に加え、配位溶媒の配列構造の変化に伴う4桁以上のプロトン伝導度の向上を見出した。現在は、放射光実験施設(SPring-8)で行った同変換過程における回折パターンの経時変化の解析を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
優れた整流特性を示した全固体プロトン整流素子の構成要素であるプロトン伝導性CPについて、金属イオン種の違いによるプロトン整流特性の変化を調査し、構造-特性相関の抽出を目指す。さらに、本年度は開発研究が限定的であったプロトン-電子混合伝導体においても、プロトン伝導パスを有する新規分子性導体や導電性配位高分子の開発を進め、アンバイポーラ伝導度の向上だけではなく、伝導プロトンと伝導電子の協奏現象の発現を目指す。特に、電子状態変化を伴う相転移温度付近におけるプロトン伝導挙動を詳細に調査する。外場(圧力、溶媒、熱)印加によりプロトン伝導度変化を伴う構造変換を示すCu(II)系CPにおいては、回折パターンの経時変化のモデル化を行い、本系におけるエネルギーランドスケープの構築を目指す。
|