研究課題/領域番号 |
20H02754
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
近藤 美欧 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20619168)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2020年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
|
キーワード | 錯体化学 / 人工光合成 / 小分子変換 / 自己集積化 / フレームワーク / 光化学 / 二酸化炭素還元 / 電気化学 / 多電子酸化還元 |
研究開始時の研究の概要 |
天然の光合成系と同等の機能を有する化学エネルギー生産システムの創出に当たっては、(1)光捕集サイト(2)酸化的触媒サイト(3)還元的触媒サイトを精密に配置した材料の開発が必須である。加えて、これら機能性サイトの性能を十分に発揮させかつサイト間の良好な機能連動を促すために(4)基質捕捉サイトおよび(5)電子伝達サイトの導入も重要である。そこで本研究では、これら5つの機能性サイトを戦略的に導入した機能統合型触媒材料の開発を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究では、天然の化学エネルギー生産系である光合成反応系の機能を再現可能な機能統合型材料の開発を主たる目的として研究を展開する。申請者らのこれまでの研究により開発された「フレームワーク触媒」(Chem. Commun., 2018, 54, 1174; Dalton Trans., 2015, 44, 15334等)を基盤とした新規触媒材料の開発を行う。フレームワーク触媒とは、触媒活性サイトに対し非共有結合性相互作用サイトを導入した分子(分子性触媒モジュール)の自己集積化により構築される結晶性多孔材料である。本材料は、分子レベルで高い規則性を示すとともにその構造中に触媒活性サイトを自在に導入可能であるという点で既存の多孔性物質にはない特長を有している。本年度の研究では、特に非共有結合性相互作用サイトとして、光増感能とCH-π相互作用能とを併せ持つピレン部位を有したフレームワーク触媒の触媒機能評価を実施した。より具体的には、これまでに電気化学的な触媒能を示すことが判明している(5,10,15,20-tetrakis(4-(7-tert-butyl)pyren-2-yl)phenyl)porphyrinato iron(III) chlorideの自己集積によって得られるフレームワーク触媒を研究対象とした。そして、可視光照射下での実験条件の最適化、ならびに各種対照実験を行った。その結果、第一遷移金属のみからなる分子性不均一系光触媒の中で最も大きな反応速度を有する光二酸化炭素還元触媒の創出に成功した。また、拡散反射紫外-可視スペクトル測定、光電気化学測定、ならびに両氏収率の決定を行い、本フレームワーク触媒の有する良好な活性に光捕集サイトとして導入したピレン部位が大きく寄与していることも明らかにすることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の概要欄にも記述したが、本年度は特に、光二酸化炭素還元を触媒可能なフレームワーク材料の創出に向けた研究を集中的に実施した。研究対象とした材料は、(5,10,15,20-tetrakis(4-(7-tert-butyl)pyren-2-yl)phenyl)porphyrinato iron(III) chloride (FeBPPy)の自己集積化によって得られる。この材料は、ピレニル基間のhead-to-head CH-π相互作用によって、1次元カラム構造を形成する。その結果、1次元カラム内で活性中心同士が近接した構造をとることができる。更にこれら1次元カラム構造同士がピレニル基間のhead-to-tail CH-π相互作用によって集積することで、疎水性のピレニル基で囲まれた細孔を有するフレームワーク触媒(FC1)となる。前年度までの研究により、FC1が光CO2還元に対し、活性を有すること、またその反応速度が1881.6 μmol/g・hとなることが明らかになっていた。この反応速度は、その時点で関連触媒と比較すると最も高いものであったが、本年度は、この触媒反応の更なる高効率化を目指した研究を行った。各種検討の結果、反応速度が29,100 μ/ g・hと10倍以上向上した。さらに反応の量子収率の決定を行ったところ、既存触媒と比較してトップクラスの値を示すことが判明した。また、量子収率の波長依存性とFC1の光捕集能の評価ならびに光電気化学測定の結果から、ピレン部位の存在が反応の進行に重要な役割を果たしていることが示された。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度までの研究により、フレームワーク触媒が、電気化学的・光化学的二酸化炭素還元し触媒として良好な活性を示すことが明らかになった。以上の研究成果を踏まえ、今後は、二酸化炭素還元触媒材料の更なる高効率化に加え、プロトン還元による水素発生触媒の開発、水の酸化による酸素発生反応に対する触媒能を有する材料の開発等、様々な小分子変換反応に対する光/電気化学的触媒能を有したフレームワーク触媒の開発を行っていきたい。最終的にはこれらの知見を統合し、酸化-還元反応の統合が可能な触媒材料の創出を目指したい。
|