研究課題/領域番号 |
20H02847
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
横野 照尚 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (10203887)
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研究分担者 |
村上 直也 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (10452822)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2020年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | グラファイト型窒化炭素 / 原子状金属イオン固定 / 二電子酸素還元 / 過酸化水素生 / 可視光照射下 / 過酸化水素生成 / 原子上金属イオン修飾 / 励起状態電荷分布DFT計算 / C3N4 / 原子状金属イオン固定化 / 酸素還元 / 可視光照射 / 原子状金属イオン修飾 / 励起状態電荷分布状態計算 / 窒化炭素誘導体 / 金属イオンの原子状配位固定化 / 過酸化水素製造 / 重合型窒化炭素 / 酸素の選択的に電子還元 / 可視光応答型光触媒 / 光触媒的過酸化水素生成 / 15族元素配位 / 窒化炭素誘導体光触媒 / ガス拡散電極 |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者は,すでに予備的実験の結果として,第15 族元素のイオンであるSb5+イオンを配位させたC3N4 の合成に成功し,Sb5+イオンを配位させていないC3N4 と比較して約30 倍程度のH2O2 生成活性を発現することを見出している.そこで,この結果を基に,さらに高活性なC3N4 材料の開発に挑むとともに,時間依存密度汎関数理論(TDDFT)を用いた電子・正孔の分布状態の可視化,光音響分光法による光触媒反応場における電子移動過程の分光計測などにより,開発したC3N4 材料の動作機構の解明を行う.また,開発したC3N4 材料とガス拡散ユニットを用いたH2O2 製造システムの構築を行う.
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研究実績の概要 |
過酸化水素(H2O2)は,衣料用の漂白剤・食品の処理・消毒剤などの身近な用途から,医療用殺菌や半導体プロセスにおける洗浄などの幅広い用途で利用されてきた.近年では持続可能な環境社会の実現に向けて,水素にかわる次世代燃料電池の燃料として,また,環境負荷の低い有機合成用酸化剤として利用することが期待されており、新規な製造技術について検討が進められている. 問題点として,①H2O2は工業的にはアントラヒドロキノンを触媒として多段階・エネルギー多消費型反応で合成されるために高価であり,環境負荷が大きいという短所を有している。そのため、我々の研究室では、こららの問題をすべて開発し、環境負荷のほとんどない太陽光などの光エネルギーのみを用いて水と酸素から常温常圧で過酸化水素を高効率で製造する触媒およびシステム開発を継続して行ってきた。 本年度では、グラファイト型窒化炭素(PCN)のユニットの窒素原子部位に原子状の分散状態でd10元素群(Sb, P, As)を固定化する技術を世界に先駆けて開発した。その結果、可視光照射下で窒素原子部位にホールが集積され、d10元素群に励起電子が高い効率で蓄積された結果、非常に高い殿下分離状況を生み出すことに成功した.その結果、励起状態電荷分布DFT計算によりホールは水を酸化して酸素を生成し、その酸素を励起電子で二電子還元することで過酸化水素を連続的に生み出す理想的な反応システムを構築することに成功した。420 nmの光を利用した過酸化水素生成の見かけの量子効率は18%に達し、報告時の世界最高効率を達成した。また、基本ユニットのPCNの構造を制御して光の利用効率を向上させるために、原料のメラミンとバルビツル酸の復号下により440nm程度までしか光を利用できなかったPCNが570nmまでの光を利用するPCNBAの開発にも成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず、本年度に開発したグラファイト型窒化炭素(PCN)のユニットの窒素原子部位に原子状の分散状態でd10元素群(Sb, P, As)を固定化するした新規な原子状金属イオン固定化PCN光触媒は、440nmまでの光の利用率ではあるものの420 nmの光照射下において見かけの量子収率18%という、報告時での世界最高効率を達成している点が大きな理由としてあげられる。さらに、今まで報告されているPCN光触媒によるH2O2生成反応は、ホールの酸化力が低いことから、水の酸化がほとんど進行しない。そのため、一般的には、犠牲剤を添加してホールを消費させ、残った励起電子により酸素還元を行うことでH2O2の生成を進行させるのがほとんどの報告例であった。そのため、外部からの酸素供給は、必須の実験条件であった。一方、今回我々が開発した原子状金属イオン固定化PCN光触媒は、電荷分離効率が極めて高いことからホールの酸化力が飛躍的に向上した結果、溶媒の水を酸化して酸素発生することが可能となった。その結果、外部からの酸素の供給や、犠牲剤の添加が全く必要ない閉鎖系でのH2O2の生成プロセスが構築された。この反応系は、社会実装を可能にする画期的な触媒が開発されたものであることがもう一つの理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究結果により、原子状で金属元素をPCN骨格内に固定化することで、励起電子やホールの分布状態を制御する技術が飛躍的に進歩した。生成したH2O2からフェントン反応を複合化させてOHラジカルを生成させる系を開発する。さらにホールの酸化力や反応性を制御して、水から酸素ではなく、OHラジカルを選択的に生成させる系の開発を行い、高効率なOHラジカルの生成光触媒の合成を計画している。さらに、この光触媒を利用した水の浄化システムの開発を計画している。 また、光の利用率をさらに拡大するためにPCN以外に共有結合性有機構造体(COF)を基本骨格とした新たな光触媒を開発し、赤外領域の光も利用可能にしたH2O2生成用の光触媒の開発を目指す。
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