研究課題/領域番号 |
20H02909
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 征司 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90343061)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2020年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 脂肪滴 / イソプレノイド / 天然ゴム / ゴム粒子 / 無細胞タンパク質合成 / 脂肪顆粒 / ポリイソプレノイド / ポリイソプレン / プレニル鎖延長酵素 / 無細胞翻訳系 / プレニル鎖延⻑酵素 |
研究開始時の研究の概要 |
代謝工学により有用疎水性化合物を細胞内に高蓄積させるためには、脂肪顆粒(LD)やゴム粒子(RP)などの脂質一重層で覆われた構造のオルガネラへの隔離的貯蔵が重要となる。そのためには、外来酵素をそれらのオルガネラの膜に導入する必要があるが、LDやRPへのタンパク質移行機構は未解明である。本研究では、まず、無細胞タンパク質発現系を利用し、翻訳・折りたたみと共役させながらタンパク質をLDやRPに導入する手法を開発し、その系を用いて移行に必須なタンパク質モチーフとその分子機構を解明する。また、その移行機構を利用し新規ポリイソプレノイド合成酵素をRPやLDに導入することで、新規ポリマー高生産系を構築する。
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研究実績の概要 |
脂肪顆粒(LD)やゴム粒子(RP)などの脂質一重層で形成されるオルガネラは、疎水性化合物を隔離的に貯蔵することから、それらのオルガネラの膜上に種々の外来酵素を配置することで、反応生成物を膜内部へ蓄積させる代謝工学系の構築が可能となると考えられる。しかし、LDやRPへのタンパク質移行機構はほとんど未解明であった。本研究では、「(1)脂質一重層オルガネラ膜への移行に必要なタンパク質モチーフと制御機構の解明」し、その機構を応用することで「(2)脂質一重層オルガネラ膜への外来酵素導入による有用疎水性化合物生産系の構築」を行うことを目標としている。 2020年度は、上記(1)に関する研究課題として、「課題1 LD膜移行タンパク質の同定」と「課題2. 無細胞タンパク質発現系を利用したLDへのタンパク質導入系の開発」を並行して研究を行なった。パラゴムノキのRPの膜には、SRPPと呼ばれる機能未知のタンパク質が高蓄積している。また、SRPPと類似配列を有するREFも同様に高蓄積している。一方、植物由来のLD膜タンパク質には、SRPPと配列類似性を示すLDAPやMLDPと呼ばれるタンパク質が高蓄積している。そこで、これらの脂質一重層オルガネラ間に共通した膜タンパク質移行機構が存在することを予想し、本研究ではまず、SRPP、REF、LDAP、MLDPを解析対象とすることとした。 まず、LDへのタンパク質移行を解析するための手法として、植物細胞よりLDを精製し、それを無細胞タンパク質合成系に添加することで、翻訳・折り畳みと共役させながら外来タンパク質を導入する系を開発した。このアッセイ系において、GFPタンパク質はLDへほとんど導入されなかったが、LDAP/MLDPを融合させたGFPは明確にLD膜上に導入されたため、この評価系が次年度以降の研究計画に適用可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の研究においては、「課題1 LD膜移行タンパク質の同定」と「課題2. 無細胞タンパク質発現系を利用したLDへのタンパク質導入系の開発」を同時進行的に進めた。まず、課題2において、無細胞タンパク質合成系に添加するLDをアボカド中果皮から精製し、それを無細胞タンパク質合成系に導入した。しかし、アボカドLDの安定性が低く、外来タンパク質導入後のLD精製過程において、その多くが壊れてしまうことが明らかになった。また、材料であるアボカド果実の入手経路(市場や国内生産者からの購入)や品種などによって、調製するLDの安定性が大きく異なることも示された。これらから、アボカド由来LDを本研究に用いることは難しいと考え、LDを調製するための植物材料を緑藻であるクラミドモナスに変更した。クラミドモナスは培地の窒素欠乏などによって細胞内にLDを発達させることが知られているため、種々の培養条件におけるクラミドモナス細胞からLDを調製し、安定なLDを高収量で回収できる条件を検討した。これによって得られた精製LDをコムギ胚芽由来無細胞翻訳系に導入し、翻訳反応を大きく阻害しないLD添加量を決定した。 課題1においてLDへ導入するタンパク質を選抜する際に、既往の研究で取得済みであるパラゴムノキ由来RPタンパク質のプロテオームデータを活用した。一方で、LDタンパク質については、当初の計画ではプロテオーム解析によるカタログ化を行う予定であったが、クラミドモナスLDの詳細なプロテオームデータが入手可能であったため、それを参考にすることとした。これらのデータセットから、解析対象をRPのSRPPおよびREF、クラミドモナス由来MLDP、アボカド由来LDAPとした。融合させたGFPの蛍光を指標とした評価により、LDAP、MLDPはいずれもLDに導入されることが示され、次年度以降の解析系の確立に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
課題3. LD、RP膜への移行に必須なドメインの解明 SRPP、REFとLDAPおよびMLDPは同じファミリーに属し、いずれも両親媒性ヘリックスを複数有することが二次構造予測アルゴリズムや構造モデルから推定された。そこで、これらのタンパク質について、構造ドメインごとに分割した配列断片を作製し、2020年度に確立したクラミドモナス由来LDへのin vitroタンパク質導入系を用いて評価することで、移行に必須なドメインを探索する。さらに、ヘテロな膜系への移行を検証するため、RPにLDAPおよびMLDPを、また、LDにSRPPおよびREFを移行可能であるかも評価する。また、LD、RPの脂質組成を模した人工膜、またはミクロソームに対しても無細胞タンパク質導入アッセイを行うことで、移行が標的膜の脂質組成や膜構造(一重層 or 二重層)に依存するのかを検証する。 課題4. LD、RP膜移行タンパク質と相互作用するタンパク質の探索 LD、RPへの移行に寄与するタンパク質を探索するため、膜タンパク質間相互作用をアッセイ可能である酵母split ubiquitin systemを用いて、MLDPの膜結合ドメインに相互作用するタンパク質をスクリーニングする。また、LD形成を誘導させたベンサミアナタバコの葉に対し、黄色蛍光タンパク質による二分子蛍光相補アッセイを行うことで、細胞内の相互作用部位を解析し、相互作用タンパク質の膜移行における機能を解析する。 課題5. 膜移行配列と融合させた新規ポリイソプレノイド合成酵素のLD、RPへの導入 超長鎖のtrans-1,4-ポリイソプレンを合成することが報告されているサポジラのトランスクリプトームデータを取得し、transプレニル鎖延長酵素(PT)のホモログから解析候補を絞り込む。候補遺伝子を大腸菌系や無細胞翻訳系で発現させ、酵素機能を評価する。
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