研究課題/領域番号 |
20H02942
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
下村 吉治 中部大学, 応用生物学部, 教授 (30162738)
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研究分担者 |
津田 孝範 中部大学, 応用生物学部, 教授 (90281568)
北浦 靖之 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (90442954)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | 骨格筋 / ビタミンD / BCAA / グルココルチコイド / ラット / 筋萎縮 / サルコペニア / 筋タンパク質代謝 / ビタミンD欠乏食 / マウス |
研究開始時の研究の概要 |
ビタミンD(VD)は、骨格筋のタンパク質代謝および運動機能を正常に保つために重要な栄養素であることが示唆されているが、それに関するVDの作用機構についてはほとんど解明されていない。VD不足の作用は、筋萎縮を誘発するグルココルチコイド(GC)の作用と類似することより、VDとGCは拮抗的に作用する可能性が示唆される。本研究では、GCにより促進される分岐鎖アミノ酸(BCAA)分解(筋タンパク質合成阻害)と筋タンパク質分解に対するVDの作用を、正常マウスおよび遺伝子改変による筋特異的BCAA分解亢進(BCAA不足)マウスを用いて解明する。
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研究実績の概要 |
近年の研究により骨格筋を維持するためのビタミンD(VD)の役割が示唆されているが、そのメカニズムは不明である。デキサメタゾン(DEX)は合成副腎皮質ホルモンであり、高い抗炎症作用を有するが、過剰投与による筋萎縮の誘発が報告されている。そこで本研究では、DEX による筋萎縮に対するVD不足の影響についてラットを用いて検討した。 昨年度の研究では、5週齢の雄性ラットを2群に分け、対照食(AIN93G)またはAIN93G のVD欠乏食のいずれかを8週間与え、13週齢で各群をさらに2群に分け、生理食塩水またはDEX(0.6 mg/kg体重)を5日間連日腹腔内投与した。その結果、DEX投与により前脛骨筋および足底筋・腓腹筋(主に速筋)の重量は有意に減少したが、ヒラメ筋(主に遅筋)重量はDEX投与の影響を受けなかった。 本年度の研究では、第1回目実験において、5週齢の雄性ラットに低タンパク質食(タンパク質を8%に調整したAIN-93G:LPD)を4週間与え、9週齢でラットを2群に分け、昨年度の研究と同様に生理食塩水またはDEXを投与した。第2回目実験では、5週齢の雄性ラットにLPDのVD欠乏食を4週間与え、9週齢で2群に分け同様に生理食塩水またはDEXを投与した。いずれの実験も実験最終日にラットを6時間絶食させ、イソフルラン麻酔下で臓器を採取した。2回の実験のいずれにおいても、DEX投与により前脛骨筋および足底筋・腓腹筋の重量は有意に減少したが、DEX投与によりヒラメ筋重量が有意に減少したのは第2回目実験のみであった。すなわち、LPDのVD欠乏食を摂取したラットにおいてDEX投与により遅筋重量も有意に減少した。これらの所見より、タンパク質摂取量が低い場合にVDが遅筋を維持する役割を担っている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に報告したように、単純にVD不足により若齢ラットの骨格筋を萎縮させる条件は必ずしも確立されているわけではないことが判明したので、本研究の進捗状況はやや遅れ気味である。しかしながら、これまでの本研究の成果により、DEXを使用することにより速筋は有意に萎縮できることが判明すると同時に、低タンパク質食摂取でビタミンD不足の条件では速筋のみならず遅筋も萎縮させる可能性があることが判明した。高齢者ではタンパク質とVDの両栄養素が不足していることが多く、それが骨格筋の萎縮を促進する可能性が考えられるので、この栄養条件における骨格筋に及ぼす影響を解明することは生理的および社会的に意義が高いと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、AIN93Gのタンパク質含量を8%とした低タンパク質食(LPD)を実験の基本食とし、この基本食のVD栄養を通常の3倍添加した高VD飼料、またはVDをほとんど含まないVD欠乏飼料をラットに与えて8週間飼育し、VDの栄養状態を著しく対照的な状態にする。これらのラットにDEXを投与して筋萎縮を誘導する。すなわち、LPD-高VD食: (1)Saline投与群、(2)DEX投与群、またはLPD-VD欠乏食: (3)Saline投与群、(4)DEX投与群を設けて、低タンパク質食摂取の条件で骨格筋(特に遅筋)に対するVDの影響を比較検討する。 それぞれの食餌条件で8週間飼育後、9週目にDEX投与による筋萎縮を誘導する。DEX投与(0.6 mg/kg体重/日、腹腔内投与)は、骨格筋(特に速筋)に対する筋萎縮効果が確認されているので、その方法に準ずる:投与期間は連続5日間とし、最終投与日の投与約5時間後にイソフルランで麻酔して、血漿と組織(腓腹筋+足底筋、ヒラメ筋、心臓、肝臓)を採取し、凍結保存する。分析項目は、血漿と骨格筋のBCAA濃度、骨格筋重量と筋タンパク質量、肝臓のBCAA代謝系酵素(BCAT, BCKDH複合体, BDK)活性、骨格筋における遺伝子発現(mRNAの網羅的解析)などを解析する。これらの実験により、低タンパク質食摂取時におけるグルココルチコイド-誘導筋萎縮におけるVD欠乏の影響を明らかにする。
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