研究課題/領域番号 |
20H02961
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
寺地 徹 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (90202192)
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研究分担者 |
桶川 友季 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (10582439)
木村 成介 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (40339122)
山岸 博 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (10210345)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 葉緑体形質転換 / psbA / 欠失変異体 / アルビノ / タバコ / 光化学系II / マーカーフリー / 葉緑形質転換 / 葉緑体 / シャトルベクター / 形質転換 |
研究開始時の研究の概要 |
独自に開発した、葉緑体と大腸菌の双方で複製可能な「シャトルベクター」で、タバコの形質転換体を得た。この形質転換体を多数調べたところ、葉緑体ゲノムの一部がベクターに取り込まれる例が認められた。さらにその後代では、ベクターが消失し、結果として、葉緑体遺伝子の欠失変異体が得られた。そこで本研究では、この欠失変異体を活用し、遺伝子の相補によりマーカーフリーな組換え体を得る方法を新たに開発する。また、すでに得られているpsbA遺伝子の欠失変異体を用いて、光合成の電子伝達、光損傷ならびに除草剤耐性における光化学系IIタンパク質D1の構造と機能の相関を調べる。
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研究実績の概要 |
当研究室では、栽培タバコ(Nicotiana tabacum cv. SR1)を用いて葉緑体の組換え系統を多数作出してきた。その中のひとつ、#3-2と名付けた系統は、自律複製型のプラスミドを葉緑体へ導入して得た系統である。この系統の自殖第2代は、若い葉は緑色で生えてくるが、葉が発達して古くなるにつれ白色化する(アルビノになる)という、極めて特徴的な表現型を示す。また、このアルビノタバコは葉緑体ゲノム上のpsbAがプラスミドへ移行した後、プラスミド自体が脱落したことで、psbAを欠失したことも明らかとなっている。本研究は、このアルビノタバコを材料に、psbAを相補することで白色の葉から緑色の形質転換体を作出することが可能か、またこの現象を利用して抗生物質を用いず組換え体を選抜できないかを検討することを目的とした。 これまで、光化学系IIの活性測定、葉緑体タンパク質の分析、葉緑体の電子顕微鏡観察などアルビノタバコの特徴づけを行い、若い葉はpsbAを欠失しているにもかかわらず緑色であるという観察から、PSII複合体を持たなくてもクロロフィルは合成され得るという新知見を得た。また、大腸菌の菌株を工夫することで、相補実験に必須なpsbA全長を持つプラスミドを構築できることもわかった。 一方、葉緑体の形質転換では、アルビノの表現型が相補された緑色植物は得られていない。原因を調べたところ、形質転換ベクターの設計に不都合な点が発見されたので、この方法でpsbAの相補が可能か、まだ決着がついていない。今年度は、このベクターの改良と並行して、核ゲノムへのpsbA導入で相補可能か検討した。そのため、psbAの全長にrbcSのトランジットペプチドをコードする配列を連結し、この全長をアグロバクテリウム法で用いるベクターへクローニングする予定であったが、目的とするプラスミドを構築することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの実験では、葉緑体の形質転換に用いる外植片として、完全に白化した葉を用いていた。しかし電子顕微鏡観察で明らかになったように、白化した葉では葉緑体の内部構造が壊れており、psbA遺伝子が導入されD1タンパク質が供給されたとしても、葉緑体の機能が回復しない可能性が考えられた。一方で、Mini PAMによる光化学系IIの活性測定、タンパク質のSDS-PAGEおよび抗psbA抗体を用いたWestern blottingの実験などで、若い緑葉にも光化学系IIは存在しないことがわかり、この葉の葉緑体は内部構造を保っているように思えることから、今後は外植片として若い緑葉を使用したい。ただし、古い白化した葉に比べ、若い緑葉は面積が小さく、数も少ないことから、播種する種子数を増やすなどの対策をとりたい。また、プロモーターを含むpsbAの遺伝子領域は、大腸菌の系においてunclonableな領域として知られている。そのためもあってか、本研究では、総じてプラスミドの構築に苦労している。ホストとなる大腸菌の菌株を、通常の実験に用いられるDH5α株からHST16CR株に変更するなどの工夫で、psbA全長を持つ、適当なプラスミドコンストラクトの作製にとりくみたい。
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今後の研究の推進方策 |
当初からの計画通り、すでに構築を終えたpsbA遺伝子のコード領域全長を持つプラスミドを出発材料に、相同組換えでpsbA遺伝子を葉緑体ゲノムに導入することが可能な通常型のベクターおよびpsbA遺伝子をクローニングした自律複製型の葉緑体形質転換ベクター(SX20とXB30の2種類)を構築し、プラスミドDNAを大量調製する。その後、前述の理由から、アルビノの個体の若い緑葉を外植片として、ボンバードメントにより、各プラスミドDNAを導入する。また、葉緑体形質転換実験と並行して、核ゲノムへのpsbA導入でアルビノの表現型を相補することが可能か、検討したい。そのため、psbAの全長にrbcSのトランジットペプチドをコードする配列を連結したものを、早急にバイナリーベクターへクローニングし、アグロバクテリウム法で組換え体を作製したい。
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