研究課題/領域番号 |
20H02967
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39020:作物生産科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 朋之 (勝部朋之) 京都大学, 農学研究科, 准教授 (50224473)
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研究分担者 |
氏家 和広 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (60465276)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
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キーワード | イネ / 白未熟粒 / 突然変異体 / flo11-2 / 高温登熟 |
研究開始時の研究の概要 |
高温条件下で白未熟粒を多発するイネ突然変異体「13-45」を用いて、登熟期の異なる発育ステージに様々な高温処理と遮光処理を施し、子実外観品質やタンパク質に及ぼす影響を解析する。これにより、白未熟粒発生に及ぼす主たる環境・生理的要因と、その温度応答機構の解明を試みる。また、「13-45」の原因遺伝子であるcpHsp70-2の発現量を指標として高温耐性品種/感受性品種の選抜が可能であるかを調べる。さらに、cpHsp70-2発現量をあらかじめ高める種々の処理をすることで、それに続く高温処理が白未熟粒発生に及ぼす影響を緩和させることができるか検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、(ア)白未熟変異体「13-45」の原因遺伝子の翻訳産物であるプラスチド型70 kDa熱ストレスタンパク質2 (cpHsp70-2) 増強による高温耐性品種育成、(イ)プライミング効果を利用した高温耐性栽培技術の開発、(ウ)「13-45」の高い温度感受性を利用した高温ストレス応答機構の解明を当初研究計画に掲げた。(1)cpHsp70-2において、インド型品種と野生種の中から5つのミスセンス変異を、また、日本型品種「金南風」のプラスチド移行シグナルにアラニン2残基の挿入を見出した。このうち、「金南風」は品種「日本晴」よりも、開花後20日間の日最高気温平均値が35℃以上の場合に高い乳白率を示した。これより、cpHsp70-2の局在変化が乳白化に関与することが示唆された。一方、広く高温耐性品種を育成するために「13-45」に重イオンビームを再照射したところ、乳白率が有意に低下する系統を複数見出した。(2)「13-45」に登熟期の任意の2日間だけ高温処理を与えることで、開花後20日目(20DAF)頃に最も高温感受性が高くなることを明らかにしたが、20DAF前にあらかじめ穏和な高温ストレスを付与するプライミング処理を試みたところ、白未熟抑制効果は認められず、手法の改善が必要と考えられた。一方、出穂期の窒素施肥により、子実当たり同化産物供給量は必ずしも高くならないが、子実当たりcpHsp70-2発現量が高くなることで、乳白率が有意に低下する可能性が示唆された。(3)シンクサイズを制限した穂培養において、子実乾物重増加速度が「日本晴(51%増加)」より「13-45」で低かった(34%増加)ことから、「13-45」のショ糖受け入れ能力が低下していることが示唆された。「13-45」では、cpHsp70-2と同族の小胞体型70 kDa熱ストレスタンパク質BiPとcpHsp70-2の量比が変化しており、高温ストレス応答機構との関連が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「13-45」の子実タンパク質の分析については試料調製方法になお改善が必要なものの、HSP70の蓄積量変化が認められ、解析は着実に進行している。登熟期の任意の2日間の高温処理は、ファイトトロンの不具合もあって十分は試料数を確保するのが難しかったが、次年度はポット当り個体数を調整することで、対処可能と考えられた。一方、「13-45」に重イオンビームを照射することで、白未熟化が促進または抑制された系統を複数得ることが出来た。さらに、窒素施肥が白未熟化に及ぼす影響を子実サイズ、子実当たり利用可能同化産物量やcpHSP70-2蓄積量の面から解析し、興味深い知見を得た。また、「13-45」とその親品種「日本晴」の子実成長速度をシンクサイズを制限した穂培養により調べ、子実増加速度の差異が認められた。以上より、細胞、個体、群落レベルで白未熟粒研究を進めることができ、2023年度の研究計画につなげることができたと考えられるから。
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今後の研究の推進方策 |
「13-45」の子実タンパク質の分析については、二次元電気泳動における試料調製法の更なる改良により、十分なスポット強度を得られつつある。十分な精製タンパク質が得られれば、N末端アミノ酸配列を調べることで、その細胞内局在を推定する。登熟期の任意の2日間の高温処理では、これまで適用していた短日処理を止めることで出穂期を遅らせ、ファイトトロンの温度制御を容易にするとともに、ポット当り個体数を減らすことで十分な穎果数を有する試料を確保する。なお高温処理には前年度に引き続き人工気象器を使うことで、屋外の気象条件に影響されないようにする。一方、「13-45」に重イオンビームを照射することで得られた、白未熟化が促進または抑制された系統の世代を進めて、再現性を確認する。さらに、窒素施肥が白未熟化に及ぼす影響と、「13-45」とその親品種「日本晴」の子実成長速度に対する温度の影響を前年度にならい追試する。以上より、細胞、個体、群落レベルで白未熟粒研究を進める。
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