研究課題/領域番号 |
20H02998
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
中鉢 淳 豊橋技術科学大学, 次世代半導体・センサ科学研究所, 准教授 (40332267)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
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キーワード | プロフテラ / ミカンキジラミ / 共生 / ディアフォリン / ポリケチド / Profftella armatura / diaphorin / ribosome / protein synthesis / Escherichia coli / Bacillus subtilis / Carsonella ruddii / polyploidy / Profftella / オルガネラ様防衛共生体 / 生物活性 / マイクロビオーム / 二次代謝産物 / リボソーム / 比較ゲノム解析 / 防衛共生 |
研究開始時の研究の概要 |
世界的農業害虫「ミカンキジラミ」が持つ「オルガネラ様防衛共生体:Profftella」について、比較ゲノム解析によりその進化動態を解明する。また、RNA干渉法により共生器官の維持機構を解明し、低環境負荷な新規防除法の開発基盤を構築する。さらに、Profftella由来二次代謝産物「ディアフォリン」の生物活性の詳細を解明するとともに、上述のゲノム情報に基づいてProfftella姉妹系統から類縁化合物を取得し、各々の活性情報を収集することで、ディアフォリン関連化合物の応用利用の基盤強化をめざす。
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研究実績の概要 |
「ディアフォリン」は、世界的農業害虫「ミカンキジラミDiaphorina citri(半翅目:腹吻亜目:キジラミ科)」のオルガネラ様共生細菌“Candidatus Profftella armatura”(Gammaproteobacteria)の産生するポリケチドである。本年度は、ディアフォリンが、モデルグラム陽性細菌である枯草菌Bacillus subtilis(Firmicutes: Bacilli)の増殖と細胞分裂を阻害する一方、モデルグラム陰性細菌である大腸菌Escherichia coli (Gammaproteobacteria)の増殖と代謝活性を促進するとの興味深い事実を解明し、学術論文として発表した。さらに、枯草菌からリボソームを単離し、大腸菌由来再構成型無細胞タンパク質合成系を利用しながら、大腸菌-枯草菌ハイブリッド再構成型無細胞タンパク質合成系を構築することで、大腸菌リボソームと枯草菌リボソームそれぞれのタンパク質合成能に対するディアフォリンの活性を解明した。また、キジラミの一次共生細菌“Candidatus Carsonella ruddii”(Gammaproteobacteria)が細胞内にきわめて多数のゲノムコピーを保有することを解明するとともに、トガリキジラミ科9種の共生細菌叢解析を行い、節足動物の生殖撹乱因子として知られるWolbachia(Alphaproteobacteria)のうち、supergroup Oに属する系統を世界で初めてキジラミから検出するなど、多様な共生細菌叢を明らかにし、学術論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目標は次の5点である。(1)Profftella姉妹系統を用いた比較ゲノム解析に基づく、「オルガネラ様防衛共生体」の進化動態の解明。(2)RNA干渉法による遺伝子発現抑制に基づく、ミカンキジラミ・バクテリオーム共生系の維持機構の解明(=低環境負荷な新規害虫防除法の開発基盤の構築)。(3)Profftellaの産生する二次代謝産物「ディアフォリン」の各種原核生物に対する生物活性の解明。(4)3の分子機構の解明。(5)Profftella姉妹系統からの多様なディアフォリン類縁体の取得とその生物活性の解明(ディアフォリン関連化合物の応用基盤の強化)。(1)と(5)に関連して、Diaphorina属キジラミに由来する共生細菌のゲノム解析について、すでに一部は成果発表済みであるとともに、現在複数系統ゲノムがfinishingの段階にある。課題(2)については、RNA干渉の効果がやや不安定であるため、近縁昆虫グループで有効性の認められた改良法を適用・試行中である。(3)については、上記のように枯草菌と大腸菌に対するきわめてユニークな活性を解明し、成果発表済みであるとともに、より多様な細菌系統を国内外の微生物系統保存機関より入手し、これらに対するディアフォリンの活性評価を進行中である。 (4)に関連して、上記のように無細胞タンパク質合成系を利用し、原核性リボソームのタンパク質合成に対するディアフォリンの活性を明らかにした。さらに、ディアフォリン処理後の大腸菌と枯草菌における遺伝子発現変動を追跡するため、現在RNAseq解析を進めている。以上から、研究計画はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
上記研究目標について、(1)については、現在finishingの段階にあるゲノムを中心に、さらに多くのDiaphorina属キジラミに由来する共生細菌のゲノム解析を進め、「オルガネラ様防衛共生体」の進化動態について考察を深める。この過程で既知のディアフォリンと異なる構造を持つ類縁体を産生すると予測された系統については、(5)にあるように当該類縁体の抽出・精製を行い、その生物活性の評価を進める。(2)については、近縁昆虫グループで有効性の認められた改良法を用いて、RNA干渉による遺伝子発現抑制効果の向上を図り、これまでの解析で得られている、共生系維持において重要な役割を果たすと目される複数遺伝子の機能解明を目指す。(3)については、大腸菌・枯草菌にとどまらず、すでに着手済みの多様な細菌系統について、ディアフォリンの生物活性評価を進め、その作用スペクトルについて考察する。(4)については、これまでの研究で、すでにディアフォリン処理に対する挙動について十分に検証済みの大腸菌および枯草菌から着手し、RNAseq解析などを行うことで、ディアフォリンによる生物活性発現のメカニズム解明を目指す。
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