研究課題/領域番号 |
20H03007
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
上原 浩一 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 教授 (20221799)
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研究分担者 |
伊藤 元己 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (00193524)
瀬戸口 浩彰 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (70206647)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 希少植物 / 生物種間ネットワーク / 真菌類 / 海洋島 / 生物種間相互作用 / 真菌 |
研究開始時の研究の概要 |
小笠原諸島(海洋島)と、奄美群島(大陸島)において生育する希少種と、その生育に重要な役割を持つ土壌中の真菌類、および周辺に生育する植物も併せてその共生関係を網羅的に解析し、植物と真菌類の生物種間共生ネットワーク構造を解明することで、① 保全に適した、希少植物の生育に有効な土壌環境、有益な真菌の特定を目指す。また、それに付随して ② 小笠原諸島と奄美群島の真菌類のインベントリを作成するとともに、③ これら島嶼における植物と真菌類の生物種間ネットワーク構造の実態と特徴を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、小笠原諸島の希少植物生育地において周辺土壌および植物体の根をサンプリングして次世代型DNAシークエンサーを用いて種同定解析を行い、比較することで、植物の生育が良い・悪い土壌に特徴的な真菌を特定し機能を考察することで生育に関与するものを推定する。また、根の解析から共生・間接的な共存関係にある真菌を明らかにする。これらの調査・解析を小笠原諸島の絶滅危惧植物アサヒエビネ、タイヨウフウトウカズラ、ムニンノボタン、コバトベラにおいて実施し、土壌成分と真菌叢のデータを蓄積する。 今まで現地では希少植物の保全のために植栽を行ってきたが、既存の自生地など生育環境が良いと考えられる環境でも希少植物の実生がうまく育たないという状況が見られていた。そのため、本研究では希少植物の実生の生育にも着目し、発芽や初期成長に真菌類が影響をを検討した。希少植物にとって有益な土壌真菌が存在する環境では、実生の生育が促進され、希少植物の世代更新が進むことが期待される。小笠原における希少植物と真菌の生物間相互作用の実態と特徴を明らかにし、特に希少植物の実生にとって特異的で有益な菌を解明することを目的とし、将来的な希少植物の保全に適した生育に有効な土壌環境、有益な真菌の特定をおこなった。 これまでの調査解析で小笠原の希少種は多様な分類群の真菌と共生していることがわかった。さらに、すべての調査地において共生ネットワークはgeneralistが少なく不安定性の高いモジュール構造であることが明らかとなった。さらに、希少植物生育地の植物-真菌の相互作用において要となる真菌を推定した結果、実に多様な分類群・機能を有していた。それらの真菌の中には、植物との関連が知られていないものも多くあるが、それらの菌も潜在的に生態系を支えている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R5年度は6月末から7月にかけて小笠原諸島父島、母島において主に希少植物の実生の生育に適した土壌および真菌類の状況を明らかにすることを目的とした調査を行った。 希少植物の実生と土壌真菌類の生物間相互作用とメタバーコーディング法に着目し、それぞれの希少植物の実生で網羅的に真菌を検出し、検出された真菌の機能を詳しく調べた。特殊性上位の真菌の中から、Monacrosporium属の真菌、Talaromyces属の真菌、Tricholomataceae科の真菌がそれぞれの希少植物にとって有益なはたらきをもつ可能性が示唆された。 今回の解析では特異的な機能を持つ有益な真菌の種数よりも有害な真菌の種数が多かった。各希少植物のネットワークにおいて、共通して中心性上位にランクしたPenicillium属のように植物の抵抗性を誘導することで有害な真菌から希少植物を守る真菌が存在しており、希少植物の成長を促進する真菌だけではなく、間接的に希少植物を保全する真菌が重要であることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
R6年度も小笠原諸島父島、母島にて現地調査を行い希少種の生育、特に問題となっている実生の生育環境について、これまで既存の植物体が生育する自生地と、生育地点以外で実生の生育が良い地点について植物体の根と周辺土壌のサンプリングを行い比較解析することで、希少種の保全により有効な、実生の発芽育成に有効な環境条件、真菌の特定を進める。9月に現地調査を行い、これまでの実生の生育地点と、成体のある自生地で調査サンプリングを行う。得られた結果から、気象植物の健全な生育に有効な真菌類の特定を行いたい。
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