研究課題/領域番号 |
20H03036
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
北尾 光俊 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60353661)
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研究分担者 |
飛田 博順 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353781)
田中 亮一 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20311516)
矢崎 健一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30353890)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2020年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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キーワード | 光阻害 / 窒素回収 / 糖集積 / アントシアニン / デンプン / 紅葉 / 炭素獲得 |
研究開始時の研究の概要 |
落葉広葉樹の紅葉現象は、赤い色素であるアントシアニンが葉内へ入る光を弱め、光阻害を防ぐことで光合成活性を維持する「日傘効果」を与えると解釈されている。しかしながら、アントシアニンの合成には高濃度の糖の集積が必要であり、葉柄での離層形成による糖の転流阻害が必須となる。すなわち、紅葉により個葉の光合成活性が維持されたとしても、光合成産物の転流が阻害されているため、樹木の成長には寄与しないという矛盾が存在する。本研究では、樹冠レベルの反応に着目し、樹冠表層部の紅葉現象は樹冠内の葉を光阻害から守り、樹冠全体としての炭素獲得に貢献するとともに、効率的な窒素回収に寄与するという仮説を検証する。
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研究成果の概要 |
ハウチワカエデ成木樹冠内の異なる光環境に生育する葉を対象として,光合成活性,糖・デンプン含量,窒素含量および色素組成の季節変化を測定した。アントシアニンの生理生態学的機能として,秋季のデンプン合成停止状態において,光合成産物の消費先となり糖濃度の上昇を抑えるとともに,電子伝達で生じたエネルギーをアントシアニン合成過程で消費することで光阻害を回避することが示唆された。アントシアニンの集積により樹冠表層葉の糖誘導による老化が抑制されるとともに,光阻害を防ぐことで早期落葉が抑えられる。その結果,樹冠内部の葉を庇陰状態に保つことで,樹冠全体としての効率的な窒素回収に貢献していると考えられる。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
紅葉現象の原因であるアントシアニンの機能については,1)光阻害の回避のための日陰効果(光防御仮説),と2)昆虫忌避のためのシグナル(共進化仮説),の2つの仮説を中心に研究が進められてきた。本研究によって,新たなアントシアニンの機能として,糖濃度の上昇を抑えることによる老化抑制および電子伝達によって生じたエネルギーの消費による光阻害の回避が示唆された。また,樹冠表層葉の早期落葉を想定したポット試験により,樹冠内部の葉の紅葉期の光阻害は窒素回収を阻害することが示された。アントシアニンにより樹冠表層の葉が守られ,樹冠表層の葉の遮光効果により樹冠内部の葉が守られるという「全樹冠仮説」を新たに提唱する。
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