研究課題/領域番号 |
20H03051
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
西村 健 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353799)
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研究分担者 |
太田 祐子 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (60343802)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2020年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | バイオフォトン / ケミルミネッセンス / 木材腐朽 / 木材保存 / 褐色腐朽菌 / フェントン反応 / 発光メカニズム / オオウズラタケ / ルミノール / 野外杭 / 化学発光法による木材腐朽菌の検出 / PCR法による木材腐朽菌の検出 / 検出感度 / 木材腐朽菌 / 微弱化学発光 / PCR |
研究開始時の研究の概要 |
木材腐朽に伴う微弱発光現象は、木材腐朽菌の関与する数少ないバイオフォトンの一例であり、微弱発光を手掛かりとした木材腐朽の新たな検出手段として開発が期待される。本研究では、白色腐朽菌と比較し発光強度が極端に微弱な褐色腐朽菌を重要視し、糖の酸化的分解仮説に基づくその発光メカニズムをモデル反応で検証し、発光量子収率の高い反応とのリンクによる発光強度の劇的な向上を試みる。他方、白色腐朽菌も含め、腐朽菌の動態や生活環(子実体形成等)との関連も予想される発光挙動を明らかにする。PCR等の既往手段との検出感度に関する比較実験も行い、微弱発光検出の有する実用的メリットを多面的に検証する。
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研究実績の概要 |
褐色腐朽菌で推定されているフェントン反応(Fe2+ + H2O2 → Fe3+ + OH- +・OH)の存在を踏まえ、前年度構築したフェントン反応による極微弱発光性(およそ100cps/20RLU)の糖モデル分解系(セロオリゴ糖/ Fe2SO4 / H2O2 / Tween/水 )を利用して、発光試薬としてルミノールの添加効果ならびに反応剤や基質が発光強度に及ぼす影響について検討した。ルミノールはごく微量の過酸化水素(H2O2)依存的に2価鉄(Fe2+)が存在しない系でのみ劇的な発光強度の増大(数百万~数千万RLU)をもたらした。さらに褐色腐朽菌オオウズラタケによる腐朽試験体表面(スギ)へのルミノールの添加効果は認められなかった。恐らくフェントン反応の過酸化水素は2価鉄と直ちに反応して消失してしまい、生成した比較的長寿命と考えられるヒドロキシルラジカル(・OH)が極微弱光の放出を伴って基質を分解していく可能性が示唆された。他方、オオウズラタケ腐朽木粉(スギ)におけるラジカルの存在をESRスペクトル測定によって確認した。 初年度末に森林総合研究所第2樹木園に設置したスギ辺材杭(6本)のうち比較的腐朽の進んだ2本を引き抜き、杭の地際~底部の5区間について、目視による腐朽被害度と腐朽型(白色/褐色)ならびに発光データ(輝度・スペクトル測定)を取得の上,分離培養/PCRもしくはメタゲノム解析による腐朽菌の同定を実施した。発光強度の比較的高い腐朽部位からの分離菌の1つはニクカワタケであると同定され、腐朽型ならびに文献調査からからリグニン分解力の優れた白色腐朽菌である事が推察された。さらに超高感度CCDカメラタイプ装置による腐朽部位の画像化も実施した。他部位については現在調査中であるものの、発光強度の比較的微弱な腐朽部位からの分離菌はその微弱な発光特性から褐色腐朽菌である可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は病気を患い(長期間ではないものの3度の入院と2度の手術を経験)、全体的な計画の遅れと学会等の成果発表を見送るなどの若干の影響が生じた。これらの遅れは研究計画の調整によって次年度精力的に課題に取り組む事で対応可能であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
極微弱光を強い光に変えるための発光試薬として過酸化水素依存的なルミノールの有効性は確認できなかったが、フェントン分解機構に関する新たな着想を得た。今後の研究の推進方策として、ルミノールの添加方法等について再検証を図ると共に、ヒドロキシルラジカルの化学発光検出試薬としての報告があるフタリックヒドラジド(Backa, 1991)にも着目し、合わせて検討していく予定である。
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