研究課題/領域番号 |
20H03064
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
河野 智哉 宮崎大学, 農学部, 准教授 (60527547)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | 魚類 / 免疫 / 感染症 / 概日リズム / 時計遺伝子 / 免疫関連遺伝子 |
研究開始時の研究の概要 |
生物時計が調節する魚類の免疫リズムを明らかにし、水産増養殖現場で使用される免疫増強剤の適切な投与タイミングを探る。 まず初めに、どれくらい多くの免疫分子が生体内で概日リズムを有しているのかを明らかにする。続いて、生物時計を調節する時計遺伝子を破壊した魚を用いて、時計遺伝子によるリズムの調節機構を詳細に探るとともに、免疫応答の強弱に概日リズムが存在するかを明らかにする。これらの試験結果に基づいて、免疫増強剤の効果を最大限に引き出す時間帯を提示する。
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研究実績の概要 |
ゲノム編集技術CRISPR / Cas9システムを用いて、時計遺伝子Bmal1およびRORaノックアウト(KO)メダカの作出を試みた。Bmal1-KOメダカの作出においては、ホモ変異個体(F4)の作出に成功した。さらにBmal1-KOメダカの行動を野生型 (WT) メダカと比較したところ、WTメダカの遊泳が緩慢になる夜間 (暗闇) において、KOメダカは活発な遊泳を見せた。また、受精卵から仔魚の発生までにかかる日数がWTと比べBmal1-KOメダカは長いことが分かった。これらは、生理機構のリズムを司る時計遺伝子の破壊による表現型であると考えられる。RORa-KOメダカの作出においては、F3ホモ個体を得るところまでは順調に進んだが、ホモ個体の掛け合わせでは産卵が進まなくなったため、ホモ個体とヘテロ個体を掛け合わせることでホモ個体の増産を進めた。今後はWTとKOメダカにおける発現遺伝子の違いを詳細に検討する予定である。 続いて、異なる時刻での病原体感染に対する生体防御能について検討した。LD12:12に馴致したWTメダカを1.0 x 10^5 CFU/ml濃度の病原細菌(Edwardsiella piscicida)液で2時間浸漬感染し、その後の斃死率および体内での菌数変化を調べた。その結果、ZT2感染区における死亡率はZT14感染区と比べ有意に低く、また体内で増殖した細菌数も有意に少ないことが確認された。さらに、ZT2感染区における炎症性サイトカイン (il1b, il6, il8) およびToll様受容体 (tlr5m) の発現はZT14感染区と比べ顕著に増加した。これらのことから、病原体に対する生体防御能は時刻によって異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一昨年度の研究室の引っ越しによって、時計遺伝子KOメダカ作出に遅れが生じた。しかしながら、令和4年度には無事にホモ個体の作出を終えることができた。予定していたトランスクリプトーム解析については早々に実施し、最終年度中には成果の取りまとめを行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
時計遺伝子KOメダカおよびワイルドタイプメダカ(WT)をLD12:12条件下で飼育し、RNAseqによって発現遺伝子の網羅的な解析を行う。本実験によって、時計遺伝子によって転写が制御されていると考えられる免疫分子を探索する。続いて、LD12:12条件下で飼育した時計遺伝子KOメダカおよびWTメダカを異なる時刻に病原細菌(Edwardsiella piscicida や Aeromonas hydrophila) で人為感染させ、各感染区における累積生残率を観察するとともに、魚体内の魚病細菌数を経時的に測定する。同様の感染試験を行った各実験区のメダカより経時的に脾臓および頭腎を摘出し、免疫分子の発現動態を定量リアルタイムPCRによって解析する。さらに、同組織サンプルより免疫細胞を分離し、病原細菌に対する貪食能、活性酸素産生能を測定する。以上の研究によって、時刻別の魚類における免疫活性の差異を明らかにするとともに、WTおよびKOメダカの比較によって、当該影響が時計遺伝子に制御されて起こることを証明する。
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