研究課題/領域番号 |
20H03128
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42010:動物生産科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
村井 篤嗣 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10313975)
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研究分担者 |
水島 秀成 北海道大学, 理学研究院, 助教 (20515382)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2020年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | 畜産学 / 生理学 / 栄養学 / ゲノム編集 / ニワトリ / 栄養生理学 / 鳥類 / 卵 / 抗体 / 母子免疫 / ウズラ |
研究開始時の研究の概要 |
鳥類の卵黄には感染防御能を持つIgY抗体が蓄積しており、次世代ヒナの免疫能の強化に必須である。このIgYの輸送は卵胞に存在するIgY受容体との結合により行われると考えられているが、その同定例はない。本研究では、候補受容体として着目した「ホスホリパーゼA2受容体(=PLA2R)」が卵黄へのIgY輸送を担う受容体であることを証明し、この輸送の分子機構を解明することを目的とする。さらに、PLA2Rへの結合を強化した新しいIgY変異体を創出して、高IgY卵の創出を目指す。
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研究実績の概要 |
・鳥類のPLA2Rは卵巣(=卵胞)に陥入する毛細血管の内皮細胞で発現することが推測された。そこで、組織学的な顕微鏡観察によりPLA2Rが発現する細胞を特定しようとした。ウズラの血管内皮細胞のマーカータンパク質に対する特異抗体(QH1)とPLA2Rに対する特異抗体を使って、ウズラの卵胞で両タンパク質が同一細胞に存在するかを調査した。 ・共焦点顕微鏡による観察により、ウズラの卵胞では、PLA2Rと血管内皮細胞マーカーが同一の細胞に共局在することが判明した。一部の細胞は、PLA2Rが発現するものの血管内皮細胞マーカーの発現が見られなかった。よって、血管内皮細胞以外にもPLA2Rは発現するものの、血管内皮細胞で発現するPLA2Rが卵黄へのIgY輸送に寄与する可能性が高いと考えられた。 ・PLA2RとIgYとの結合活性を測定するために、PLA2Rの組換えタンパク質を作出し、そのタンパク質を96wellプレート上に固定化することで、IgYとの結合活性を検出した。その結果、IgYは酸性条件下でPLA2Rと結合するが、中性条件下では結合しないことを確認した。そして、卵黄に大量に輸送されることが知られているIgY変異体はPLA2Rと強く結合するものの、卵黄への輸送量が少ないIgY変異体の多くはPLA2Rとの結合が弱いことが判明した。 ・卵黄に全く輸送されないIgY変異体の中には、逆にPLA2Rと強固に結合するものが存在した。 ・PLA2R欠損ウズラを作出するために、ウズラの受精卵にガイドRNAを発現するベクターを導入し、ゲノム編集が生じた個体をスクリーニングした。その結果、発生したウズラの中にPLA2R遺伝子の途中でゲノムDNAが切断されて遺伝子編集が生じた個体を確認した。同一の遺伝子編集が起こった個体同士を交配して、次世代のウズラでこの遺伝子編集を継承する個体を選抜する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に作出したPLA2RとIgYの組換えタンパク質は、宿主である哺乳類細胞株の発育が悪く、目標とする生産レベルと純度に達しないことが判明し、令和4年2月に新たに購入した哺乳類細胞株を培養して、再度PLA2RとIgYの組換えタンパク質を作出した。そのため令和3年度の経費を令和4年度に繰り越して本研究課題を実施した。最終的に、令和3年度当初の実施計画を完遂することができた。よって、現在までに本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
PLA2RとIgYの結合活性を測定するための実験系を独自に開発した。この実験系を用いたPLA2RとIgYの結合試験によって、卵黄への輸送量が高いIgY変異体はPLA2Rに強く結合し、一方、卵黄への輸送量が低いIgY変異体はPLA2Rとの結合が弱いことが判明した。一連の成果により、PLA2Rは卵黄へのIgY輸送を担う主たる受容体である可能性が高くなった。しかし、一部のIgY変異体はPLA2Rと強く結合するにもかかわらず、卵黄へほとんど輸送されないため、より詳細な結合動態の解析が求められた。今後は、PLA2RとIgY変異体との分子間相互作用をバイオレイヤー干渉法によってリアルタイムで検出・解析することで、PLA2RとIgYの相互作用の強さと、結合動態の詳細を明らかにしていく。PLA2Rの欠損ウズラの作出については、遺伝子修復が生じた個体を交配させて、PLA2Rを完全に欠失する個体の作出を目指す。
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