研究課題/領域番号 |
20H03160
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42030:動物生命科学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清川 泰志 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (70554484)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2020年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
|
キーワード | フェロモン / 不安 / 安寧 / ラット / 野生ネズミ / 情動 / 社会行動 / ドブネズミ / 哺乳類 / 社会的緩衝 / 嗅覚 |
研究開始時の研究の概要 |
不安や恐怖は、様々な脅威を避けることを可能にする適応的な情動である。しかしこれらの情動が不必要に強くなると、正常な社会生活を妨げてしまうことになりかねない。そのため動物は、高い社会性を持つ方向に進化していくプロセスで、おそらく不安や恐怖が過度にならないよう修飾し適切な社会行動をとることを可能にする抑制メカニズムを獲得したと考えられる。そこで本研究は、ラットにおいて不安や恐怖を惹起する警報フェロモンと、不安や恐怖を抑制する安寧フェロモンという、応募者が見出した2つの情動フェロモンをモデルとして、不安や恐怖の制御メカニズムを理解することを目指す。
|
研究実績の概要 |
本年度に得られた主要な成果は以下の通りである。 警報フェロモンに関する研究 警報フェロモンのリガンドである4-メチルペンタナールとヘキサナールはそれぞれ鋤鼻系と主嗅覚系で受容されるため、これらの情報が「統合センター」にて統合された後に、分界条床核へと伝達されていくことが想定されている。この統合センターを同定するために検討を進めたところ、扁桃体内側核後腹部が統合センターであることが明らかになった。またその他にも、幾つかの系統のラットから警報フェロモンが放出された場合には、その存在を認識できないというように、警報フェロモン効果の系統差が存在することが明らかになった。 安寧フェロモンに関する研究 安寧フェロモン作用の神経メカニズムとして、前嗅核後部が重要な役割を担っていることが示唆されている。しかし前嗅核後部はこれまでほとんど解析が行われてこなかった神経核であるため、基盤となる解剖学的情報が非常に乏しい神経核であった。そこでトレーサーを用いて解析を行ったところ、前嗅核後部は扁桃体内側核後腹部や扁桃体基底外側複合体と解剖学的に接続していることが明らかになった。また安寧フェロモン作用においても、警報フェロモンの統合センターである扁桃体内側核後腹部が重要な役割を担っていることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
警報フェロモンに関しては、鋤鼻系と主嗅覚系で受容した情報を統合する「統合センター」の候補となる領域を同定することができた。また並行して、鋤鼻上皮で受容されることが明らかになっているものの、その受容体が不明であった4-メチルペンタナールの受容体を同定することを目指しており、実際に絞り込みを開始することができた。そして安寧フェロモンに関しても、扁桃体内側核後腹部がその作用に関与していることを明らかにすることができた。さらに今後の研究進展に必須となる、前嗅核後部の解剖学的情報を数多く得ることができた。加えて安寧フェロモン分子に関する研究に関しても有力な候補物質を同定することができた。以上を勘案すると、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
警報フェロモンに関しては、これまでの研究を継続し、発展させていく。すなわち、扁桃体内側核後腹部が1)候補領域と分界条床核が解剖学的に接続しており、2) 候補領域と分界条床核との接続が警報フェロモンを受容した際に活性化し、3) 候補領域と分界条床核との接続の活動を人工的に操作すると警報フェロモン作用が変容することを検討する予定である。また受容体同定に関しても現在の研究を進め、候補受容体を絞り込んでいく予定である。 安寧フェロモンに関してもこれまでの研究を継続し、発展させていく予定である。神経メカニズムに関する研究では、基盤となる解剖学的情報をさらに収集し、またフェロモン作用を生み出す神経化学物質を同定することを目指す。またフェロモン分子に関する研究では、候補物質がフェロモン分子であることを様々な側面から検討するとともに、野生ドブネズミのコントロールに応用するための技術開発に取り組む。
|