研究課題/領域番号 |
20H03174
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
堀江 恭二 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30333446)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2020年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | 全能性 / 多能性 / ES細胞 / iPS細胞 / マウス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、マウスES細胞から全能性細胞を誘導して、そこから人工的な初期胚を作製し、最終的には全発生過程を人工的に再現することを目指す。応募者はこれまで、マウスES細胞が多能性状態と全能性状態の間を揺らいでいることを明らかにした。さらに、各状態を規定する転写因子セットを同定する方法を確立し、転写因子セットの発現レベルの操作によってES細胞の状態を遷移させることに成功している。本研究では、この方法を発展させることで、真の全能性状態を誘導し、そこからの分化誘導によって、交配に依存しない動物個体作製法を確立する。
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研究実績の概要 |
動物個体における遺伝子改変は、遺伝子機能を解明するための手法として、医学・生命科学の発展に必須の技術となっている。近年のCRISPRシステムの到来により、ほとんどすべての動物で、受精卵での遺伝子改変を簡便に遂行できるようになり、動物実験の重要性がさらに高まってきた。ところが、このことは同時に、過去に例を見ないほどの動物実験の急増を招き、多くの研究機関において、飼育動物数が許容量の限界に達している。この状況を解決するための方策として、本研究では、マウスES細胞から全能性幹細胞を樹立し、そこからの人工的初期胚の作製、さらには個体発生の再現を目指している。 上記目的を達成するために、令和3年度は、以下の2つの方法を試みた。 (1)マウスES細胞から全能性状態を誘導するための候補阻害薬として、我々が独自に特定した、蛋白質の脂質修飾を抑制する阻害薬の効果を検討した。さらに、ヒトのiPS細胞に対する効果も検討し、初期化状態を表す蛍光蛋白を搭載したレポーターベクターを用いて、この阻害薬によってヒトiPS細胞の初期化状態が亢進することを示唆する結果を得た。ヒトiPS細胞においてRNA-seqを行い、内在性遺伝子の発現変化の観点から、初期化の評価を開始した。 (2)強制発現をさせると全能性状態のマーカー遺伝子であるZscan4がマウスES細胞において亢進するDNA結合蛋白を特定した。さらにこの遺伝子の機能を解析するために、この遺伝子をTet-systemで制御できるベクターを構築し、マウスES細胞へ導入して細胞株を樹立した。今後、本遺伝子を様々な条件下でON/OFFできる状態にある。この遺伝子は、配列が類似した遺伝子群が染色体の同一の領域に存在し、サイズがメガベースにも及ぶ巨大な遺伝子クラスターを為す。このクラスター全体を、マウスES細胞の両アレルで欠失させることにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規に特定した阻害薬が、マウスES細胞のみならず、ヒトiPS細胞においても、全能性を高める効果のある可能性が出てきている。近年、ヒトの初期発生の研究を進めるための新たな手法として、ヒトiPS細胞からの全能性状態の誘導は注目を集めており、その点から、本研究の進展が期待される。また、マウスES細胞において全能性マーカーの発現を誘導するものとして特定したDNA結合蛋白は、これまでに全能性状態との関係性は報告されていない。このように、新規の知見が得られつつあり、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究実績では、細胞の遺伝子発現状態から全能性状態に近いかどうかを判定してきた。しかし、全能性状態を誘導できたと言えるためには、Blastoid形成のような、個体発生を模倣した評価も必要となる。今後は、このような機能アッセイも取り入れることが重要と考える。また、新規に特定した阻害薬や遺伝子について、RNA-seqのデータをもとに、全能性の制御機構を詳細に解析する予定である。
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