研究課題/領域番号 |
20H03192
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43020:構造生物化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
片平 正人 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (70211844)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2020年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | 核酸構造 / NMR / 反復配列 / 液液相分離 / 核酸 / ダイナミクス / 反復配列RNA / 構造 / RNA / 神経変性疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
最近、RNA分子のみでも液液相分離(LLPS)が起こる事が報告された。当該RNAは反復配列からなるが(ポリRNA)、反復回数が閾値を超えると相転移して、LLPS状態ないしはゲル化状態となる事が報告された。本研究ではこのポリRNAに関し、塩基対の形成様式(2次構造)とその強さ、及び3次元フォールドの概略を、NMR法によってin vitro及びヒト生細胞中においても決定する。得られた構造に基づいて、何故反復回数が閾値を超えた場合にのみ相転移が生じるのかを解明する。また、LLPS等の人為的な操作にも挑戦する。
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研究実績の概要 |
3本のDNA鎖からなるY字型のDNA構造体(Y-DNA)が、相補配列を有する末端部分を介して分子間で相互作用し、コンデンセートを形成することが報告されている(Sato et al., Science Advances, 2020)。本研究ではこの系を用いて、コンデンセートを形成する核酸およびそこに内包された分子のダイナミクスをNMR法により解析した。 Y-DNAのコンデンセート試料(i)と、Y-DNAのコンデンセートの内部環境を調べるために、コンデンセート形成に関与しないテロメア配列からなるDNA(teloDNA)をコンデンセート中に導入した試料(ii)を調製した。さらに(i), (ii)を遠心分離し、下層(コンデンセート状態)と上層(分散状態)に分け、それぞれに含まれるY-DNAおよびteloDNAの拡散係数(並進運動を反映)と横緩和時間(回転運動を反映)をNMR法によって導出した。 (i)に関し、コンデンセート状態のY-DNAの拡散係数と横緩和時間は、分散状態中に比べ、共に小さい値であった。これは、コンデンセート中では、Y-DNAどうしがネットワークを形成することで、並進運動と回転運動が共に抑制されていることを示唆している。一方、(ii)に関し、コンデンセート状態中のteloDNAについては、分散状態に比べ、拡散係数は小さい値を示すが、横緩和時間には明確な違いが見られなかった。このことから、コンデンセート状態では、Y-DNAのネットワーク形成によってteloDNAの並進運動が分散状態に比べて抑制されるが、回転運動は影響されないことがわかった。このことは、コンデンセートによる区画化された反応場の形成とその将来的な応用という観点から興味深い知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核酸のみによって生じる液液相分離に関して、コンデンセートを形成する核酸分子の拡散係数(並進運動を反映)と横緩和時間(回転運動を反映)をNMR法によって決定する事に成功した。また、コンデンセートに内包された、液液相分離を生じない核酸分子に関しても、拡散係数(並進運動を反映)と横緩和時間(回転運動を反映)をNMR法によって決定する事に成功した。これらのダイナミクスに関する情報により、核酸のみで形成されたコンデンセートがどのような状態にあるのかについて、新しい知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
核酸のみからなるコンデンセートに種々の分子を内包し、これらの分子の拡散係数(並進運動を反映)と横緩和時間(回転運動を反映)をNMR法によって決定する。これにより、核酸のみからなるコンデンセートの実態(構造、ダイナミクス、内包分子との相互作用等)に関する更なる情報を取得すると共に、コンデンセートの反応場としての可能性を探る。
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