研究課題
基盤研究(B)
膜輸送体は、脂質膜を越えて物質を伝搬することで細胞の恒常性維持や細胞間でのコミュニケーションなどに関わる。これらの輸送体は、基質結合部位が細胞内外に開いた二つの異なる状態を含む、複数の中間体を遷移することで機能する。したがって、その輸送機構を理解するためには、動的挙動を含めた解析が必要である。本研究では、クライオ電子顕微鏡と、高速読み出しが可能な電子直接検出器を駆使することで、膜輸送体がはたらく過程を動画として描写することで、これらの分子がどのようにして膜を越えて物質輸送を行うのかを理解することを目的としている。
膜輸送体は、脂質膜を越えた輸送を行うだけでなく、外界の環境の変化などに応じてその輸送活性を変化させることで、ヒトを含む生命活動において、多くの必須な役割を持つ。本研究では、クライオ電子顕微鏡による構造解析によって複数の膜輸送体の構造解析を行い、その分子機構の解明を行った。特に、P型輸送体ファミリーに属するポリアミン輸送体ATP13A2に関しては、輸送サイクルにおける複数中間体の構造から、他のP型輸送体には見られない独自の仕組みを持つことを明らかにした。
ATP13A2はリソソームではたらくポリアミン輸送体であり、細胞外からのポリアミン取り込み経路において重要な役割を持つ。ATP13A2はパーキンソン病の原因遺伝子としても同定されており、これは老化にともなって細胞内のポリアミン合成が減少すると、ATP13A2のはたらきが相対的に重要になるためであると考えられている。今回の研究から、ATP13A2はNTDと呼ばれる独自のドメインが脂質と相互作用して、特定のコンフォメーションを安定化することで、輸送活性を制御していることが示された。これらの成果は、将来的には、ATP13A2を標的とした、新たなパーキンソン病の治療薬の開発などへつながる可能性がある。
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