研究課題/領域番号 |
20H03224
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
茶谷 絵理 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (00432493)
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研究分担者 |
大橋 祐美子 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(RPD) (10422669)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2020年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
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キーワード | アミロイド / 中間体 / 準安定 / ミスフォールディング / 蛋白質 |
研究開始時の研究の概要 |
アミロイド線維の核形成は、アミロイドーシス発症を決定づける重要なプロセスであるが、詳細な分子機構は不明である。本研究では、アミロイド核形成より先に生成する準安定なタンパク質集合構造(核前駆体)を捕らえ、構造特徴や生成プロセス、さらにアミロイド核構造への転移の様子を調べることで、疾病が発症する直前のタンパク質分子の動態を明らかにする。
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研究実績の概要 |
アミロイド線維の核形成は、アミロイドーシスの発症を決定づける重要な初期プロセスであると考えられる。本研究では、核が出現するまでにタンパク質分子がどのように集合し構造変化を経るのかを解明するために、核形成より先に生成する準安定なタンパク質集合構造(核前駆体)を捕らえ、構造特徴、生成プロセス、およびアミロイド核構造への転移の解析を行う。さらに核前駆体を生成するタンパク質が持つ構造やアミノ酸配列の特徴、さらに外部因子により与えられる影響を検討し、核前駆体が生成するために必要な条件や核前駆体が備えるべき構造的特徴を明らかにする。これらを通して疾病が発症する直前のタンパク質分子の動態を総合的に理解することを目的とする。 令和4年度は、インスリン由来ペプチドの核前駆体形成機構について、解析結果を論文にまとめた。さらに、タウ、αシヌクレイン、Sup35NMでの核前駆体観察を前年度に引き続き進め、タウについては酸化環境においてジスルフィド結合形成が進行すると凝集経路が変わることを、αシヌクレインについては、プロトフィブリル様の核前駆体が存在することを確認した。さらに、Sup35NMの液滴状集合体からアミロイド線維が形成することを観察し解析を進めた。また、低分子熱ショックタンパク質の一種であるαBクリスタリンが、インスリン由来ペプチドの核前駆体に結合しサイズ発達を顕著に抑制する様子を捉え、光散乱や小角X線散乱、電子顕微鏡観察による経時追跡を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インスリンとインスリン由来ペプチドで得られた結果を糸口として、疾患に関わるタンパク質へと対象を拡張する段階へと進んでおり、様々なタンパク質に共通した核前駆体を経由したアミロイド核形成の機構を見出しつつある。以前から、多くの研究でオリゴマーやプロトフィブリルがアミロイド線維形成反応初期に生成することが指摘されてきたが、研究の進展により、これらの分子種がアミロイド線維の核形成中間体として機能する場合の集合プロセスや役割に対しての理解が進展した。また、核前駆体が低分子熱ショックタンパク質の凝集阻害ターゲットであることは、核前駆体に注目する意義を強く示す。一方で、核前駆体から線維への転移の仕組みに関しては、依然として追跡が困難である。打開策となるような解析手段を考案する必要性を感じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も病因性タンパク質やペプチドを解析対象をとした研究を展開し、アミロイド線維核形成機構の本質的理解を目指す。タンパク質凝集反応の定量的な追跡は難しいと考えられてきたが、タウやαシヌクレインでは動的光散乱や小角X線散乱を用いるとサイズ発達を追えそうである。そこで、経時的なサイズおよび形状変化の追跡を継続し、タンパク質分子レベルでの核形成メカニズムの明確化を目指してインスリンで構築した凝集モデルの適用可否を次のステップとして検証したいと考えている。さらに、液液相分離により形成されるドロプレットは細胞内でのアミロイド核形成の主要な反応場である可能性が指摘されている。本研究でも、ドロプレットから凝集開始し核前駆体に相当する構造が生成する様子を捉え、生体内で進行するアミロイド核形成の実態の理解を目指す。
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