研究課題/領域番号 |
20H03231
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
横山 謙 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (70271377)
|
研究分担者 |
光岡 薫 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 教授 (60301230)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2020年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
|
キーワード | ATP synthase / クライオ電子顕微鏡 / 生体エネルギー変換 / V-ATPase / 回転分子モーター / 単粒子解析 / bioenergetics / ATP / ATP 合成酵素 / ATP合成酵素 / 構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
V型ATPase (V-ATPase) は、膜横断的なプロトン移動と、ATPの合成もしくは分解をエネルギー共役させる回転分子モータータンパク質である。クライオ EM による単粒子解析は、結晶化条件に拘束されることなく、そのため V-ATPase が働いている様々な溶液条件での構造を得ることを可能とする。さらに構造のクラス分けにより、同じ溶液条件で取りうる複数構造を決定することもできる。飽和ATP濃度条件、加水分解が遅くなる条件、ATP 濃度を低くした ATP 結合待ち条件での構造を明らかにし、触媒サイクルと構造変化の対応付けをすることで、回転触媒機構による ATP合成反応の全容を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
V型ATPase (V-ATPase) は、膜横断的なプロトン移動と、ATPの合成もしくは分解をエネルギー共役させる回転分子モータータンパク質である。クライオ EM による単粒子解析は、結晶化条件に拘束されることなく、そのため V-ATPase が働いている様々な溶液条件での構造を得ることを可能とする。さらに構造のクラス分けにより、同じ溶液条件で取りうる複数構造を決定することもできる。我々は、真核生物の V-ATPase の先祖と考えられるバクテリア由来の V-ATPase (V/A-ATPase) を研究材料として用い、ATP結合待ち条件(ATP低濃度条件)、触媒反応待ち条件(ATP濃度飽和条件)、および加水分解反応が遅くなるATPアナログであるATPγSの飽和濃度条件でナノディスクに再構成したV/A-ATPaseを反応させた。それぞれの反応液からクライオグリッドを作成し、クライオ電顕で撮影した。それぞれの条件での構造を比較することで、以下のことが判明した。従来ATPの結合と同時に回転すると考えられていたが、ATPが結合直後の構造が得られたことから、ATPの結合後に回転することがわかった。また、ATP加水分解待ち条件で得られた構造では、ATP加水分解が起こる触媒部位にADPが結合していた。このことから、ATPの加水分解と回転が同時に起こることが示唆された。以上の結果より、V1部分の三つの触媒部位で起こる触媒イベントと120度ステップが同時起こることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題で目指していた V/A-ATPase の動的構造解析が達成された。すなわち、触媒待ち条件、ATP結合待ち条件、ATP加水分解待ち条件の反応液中の V/A-ATPaseの構造を決定することができた。それぞれの構造をつなぎ合わせることで、V/A-ATPase のATP加水分解にともなう構造変化を再現することができた。この結果をまとめ論文として投稿することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今回の結果から、ATPの加水分解も回転に寄与しているモデルが導き出されたが、これは従来のモデルと対立するものであり、今回のモデルを支持する実験を行う必要がある。そのために、時間分解能の要素を加えたスナップショット解析を行う。具体的には、ATPを完全に取り除いた V/A-ATPase に対して、ATP濃度が低い状態で反応させた後の溶液からクライオグリッドを作成した。この時、反応液にはATPの結合を遅くする硫酸イオンをわずかに加え、反応開始後すぐに ATPが V/A-ATPaseに結合しないようにし、一つのATPが結合した直後の構造を得る。同様の実験を ATP飽和条件で行い、ATPの結合様式が異なる構造を得ることで、三つの触媒部位での反応が起こらない時に早いステップが起こるかを検証する。
|