研究課題
基盤研究(B)
脂肪肝はインスリン抵抗性や非アルコール性脂肪肝炎・肝ガンの原因である。これまでに食餌性肥満誘導マウス(DIOマウス)を用いて複数のオーム階層の網羅的な解析が行われてきた。しかし、これらの研究の殆どが単一階層の解析であり、対象サンプルとの2点間比較である。そこで本研究ではエピゲノム・トランスクリプトーム・プロテオーム・メタボロームのデータを取得し、多階層に跨るネットワークを同定する。同定したネットワークを基に数理モデルを作成し、肥満を制御することを目指す。
食餌性肥満と通常食マウスの肝臓から得た5階層7種のオームデータに対して、数理的手法、統計的手法、データベースを駆使し多階層ネットワークを構築した。これらの結果から、全ての階層において、多くの分子が2つの異なるタイミングで変動していることを見出した。同時に、数理解析の結果から階層間の制御も2つのタイミングに行われていることが分かった。これらの結果は、脂肪肝の進行が2段階で変化していることを示している。さらに、得られたネットワークを基に代謝経路の特徴を抽出し、経路間のメタレベルでの制御も明らかにすることが出来た。本研究により、肥満に伴う脂肪肝進行の全体像の端緒が明らかとなった。
生命現象は全て多階層に跨るネットワークに制御されているため、生命現象の全体像を明らかにするには、この多階層ネットワークを明らかにする必要がある。本研究で開発したトランスオミクス解析の手法は階層を繋げるのみならず、階層間の制御に関与する他の制御の寄与とタイミングも明らかにすることができた。本手法により、今後のオミクス研究に新たな方法と視点を与えられると期待される。また、肥満に伴う脂肪肝の進行が、2段階によって変容するという知見は、肥満の状態に応じた対応(治療)が必要であることを意味しており、治療への応用も期待できる。本研究の手法と結果は、他の疾患の理解にも貢献すると期待される。
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