研究課題/領域番号 |
20H03269
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
工樂 樹洋 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (40391940)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2020年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 分子進化 / Hoxクラスター / 発生 / エピゲノム / 軟骨魚類 / 偽常染色体領域 / 性染色体 / クロマチン / Hox遺伝子 / 分子進化学的解析 / 全ゲノム情報 / 発生制御 / オミクス / 円口類 / Hox / 全ゲノム重複 / Hi-C |
研究開始時の研究の概要 |
脊椎動物は、基本的に4つのHoxクラスターを有するが、機能欠失により表現型が認められやすく、肢芽や対鰭という単純な系で扱えるHoxAやHoxD遺伝子群に知見が大きく偏っている。本研究では、非実験動物のゲノム情報をも駆使した高密度な種間比較と高精細な分子進化学的解析により、Hoxクラスター構造に潜む機能的制約を暴く。さらに、配列から読取ることのできない、核内高次構造などのエピゲノム情報を解析することにより、4つのHoxクラスターを持つことの堅牢性と冗長性が、時空間的Hox遺伝子制御をどのように導いたのか、また、それが脊椎動物の表現型進化にどのような役割を果たしたのかという大局的な問いに挑む。
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研究実績の概要 |
これまで扱ってきた軟骨魚類イヌザメと同じテンジクザメ目に属するトラフザメのHoxC遺伝子クラスターの配列を解析し、いくつかの構成遺伝子は二次的に欠落していながらも、HoxC6, C8, C11, C12が保持されていることを明らかにした。さらに、これらのHoxC遺伝子群がゲノム上で連続したクラスターを形成していることが判明した。ただし、通常約100Kbという長さに納まっているクラスター長は著しく伸長していた。HoxC遺伝子クラスターは、前年まで既にイヌザメで見出していた通り、X染色体の端に位置しており、さらに、この領域がいわゆる偽常染色体領域(pseudoautosomal region)であることを見出した。この領域は、GC含量が高いうえ、ゲノムDNAを用いたqPCR実験によって、常染色体と同じ増幅コピー数を示すというデータを得た。いっぽうで、X染色体のそれ以外の領域では、XYヘテロであるため、qPCRにおける増幅コピー数は、オスでメスの約半分となることが観測できた。進めていたトラフザメの全ゲノム配列情報の解析を行い、上記のHoxC遺伝子群の配置やHox遺伝子群の発現プロファイルについて収録した原稿を投稿し、現在、2度目のピアレビュー査読中である(Yamaguchi et al.2022としてbioRxivにてプレプリント掲載)。今年度中にゲノム学の国際誌に出版が実現すると期待している。さらに、これまでイヌザメで進めてきた研究の成果も併せ、複数の国内での研究会などでの講演を行うとともに、2022年6月には、対面開催された国際学会である欧州進化発生学(Euro Evo-Devo)会議において、自らオーガナイズしたシンポジウムにて、軟骨魚類のHoxC遺伝子群に関し特に種間の遺伝子レパートリおよび遺伝子発現プロファイルとその進化的変遷について発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クロマチンデータ解析を進めながら、ゲノムDNA配列上の奇異な特徴を見出していたHox C遺伝子群のゲノム上の構成について精査し、後者にとくに大きな進歩があった。これまで扱ってきた軟骨魚類イヌザメと同じテンジクザメ目に属するトラフザメについて、全ゲノム配列情報を取得しHox遺伝子群の所在を調べた結果、HoxC遺伝子群がゲノム上で連続したクラスターを形成していることが判明した。ただし、通常約100Kbという長さに納まっているクラスター長は著しく膨張していた。HoxC遺伝子クラスターは、前年まで既にイヌザメで見出していた通り、X染色体の端に位置しており、さらに、この領域がいわゆる偽常染色体領域(pseudoautosomal region)であることを見出した。この領域は、GC含量が高いうえ、ゲノムDNAを用いたqPCR実験によって、常染色体と同じ増幅コピー数を示すことを示すことができた。いっぽうで、X染色体のそれ以外の領域では、XYヘテロであるため、qPCRにおける増幅コピー数は、オスでメスの約半分となることが観測できた。このように、HoxC遺伝子クラスターの特徴づけを行う中で、本課題が、軟骨魚類で初めてのX染色体および偽常染色体領域の発見につながったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
複数の軟骨魚類のゲノム配列整備が実現し、完成度の高いゲノム配列を使用したエピゲノム解析が可能となっている。シークエンスデータの解析方法の吟味も済み、準備が整っている。X染色体に位置する初めての脊椎HoxクラスターとしてのサメHoxCクラスターの構造についての分子進化学的特徴にも注目しながら、Hi-Cをはじめとするクロマチンデータの解析を進める。すでに利用しているイヌザメと合わせ、トラザメ発生期の胚からもHi-Cデータを取得することにより、オミクスデータ解析を遂行する。
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