研究課題/領域番号 |
20H03301
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田中 幹子 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (40376950)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2020年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | 進化発生 |
研究開始時の研究の概要 |
動物にとって不要な器官が退縮する際は、その器官の発生に関わる遺伝子の発現が変化することが知られている。走行に特化したエミューでは前肢が退縮しているが、近年、その前肢の退縮は肢形成に無関係な遺伝子が前肢芽に発現したためであることが示された。しかしながら、この遺伝子の発現がなぜ前肢の退縮に繋がったのかは不明のままである。そこで本研究では、これまでの器官退縮機構とは異なり、遺伝子発現領域を新たに獲得するという積極的な方法で前肢を退縮しているエミューを題材に、前肢の退縮機構を明らかにすることを目標に研究を行う。本研究の遂行により、新しい器官退縮の発生機構の提唱できることが期待される。
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研究成果の概要 |
本研究では、エミューの前肢の退縮機構の解明を目的に研究を行った。その結果、エミューの前肢は、骨の短縮、滑膜関節の消失、左右非対称な骨格という特徴を示すこと、これらは前肢の先端に筋肉が存在しないため発生中に肢を動かせないことに起因することを示した。さらに、前肢の筋前駆細胞に二種類の細胞の特徴を備える細胞が存在していること、これらが先端へ遊走せず、基部で大規模な細胞死を起こすために、先端に筋肉がなく、力学的ストレスが欠如することで、エミュー特有の骨格が形成されることを見出した。本成果は、遺伝的要因と後天的要因の組み合わせによって起こる新な器官退縮の提唱に繋がった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
生物に不要となった器官の退縮は、その器官の発生を担う遺伝子の発現量や発現領域の変化に起因して、細胞数が減少することによって起こると考えられていた。本研究の成果は、器官の退縮が単にその器官の発生に必要な因子の欠如にはよらず、新しい細胞種の存在という遺伝的要因と筋形成不全に伴う力学的ストレスの低下という後天的要因の組み合わせによって起こりうるという、これまでの常識を覆す全く新しい器官退縮の発生機構の提唱に繋がった。本研究では、形態変化の要因を考える上で、ほとんど考慮されてこなかった視点の重要性を提案しており、今後の発生学分野研究と進化学分野研究の展開に新たな方向性を提案する重要な成果にとなった。
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