研究課題/領域番号 |
20H03303
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
菊池 義智 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30571864)
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研究分担者 |
竹下 和貴 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (40799194)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2021年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2020年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 共生 / 進化 / 微生物 / 昆虫 / 遺伝的基盤 / 細胞内共生 |
研究開始時の研究の概要 |
あらゆる真核生物の共通祖先で生じたミトコンドリア獲得のインパクトからもわかるように、細菌との細胞内共生は生物進化において重要な役割を果たしてきた。100万種以上が知られる昆虫はその半数が細胞内共生細菌を持つと言われ、細胞内共生の理解に向けて古くから研究が行われてきた。しかし、共生細菌の培養や遺伝子組換えが難しい事から、昆虫における細胞内共生の遺伝的基盤についてはほとんど理解が進んでいない。本研究では、カメムシ類で見つかった「異なる宿主で腸内共生と細胞内共生を行う」培養・遺伝子組換え可能な共生細菌を対象に、共生の遺伝的基盤を徹底解明する。
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研究実績の概要 |
100万種以上が知られる昆虫はその約半数が細胞内共生細菌を持つと言われ、細胞内共生現象の理解に向けて古くから研究が行われてきたが、共生細菌の多くが宿主細胞内に高度に適応しているために培養や遺伝子組換えが難しく、細胞内共生の遺伝的基盤についてはほとんど理解が進んでいない。これまで我々は遺伝子組換え可能なホソヘリカメムシの腸内(細胞外)共生細菌を研究してきたが、最近この細菌がヒョウタンナガカメムシ類において細胞内共生を行うことを発見した。本研究は、この「異なる宿主で腸内共生と細胞内共生を行う」共生細菌を対象に、共生細菌側の遺伝的基盤を徹底解明することを目的としている。本年は、昨年度中に同定することに成功した細胞内共生関連遺伝子に焦点を絞り、Burkholderia insecticola RPE64株の遺伝子変異株を作成し、定量PCR、共焦点顕微鏡観察、電子顕微鏡観察によってその体内動態を詳細に調査した。また、その遺伝子欠損株が共生した際の宿主昆虫(ホソヘリカメムシ、コバネヒョウタンナガカメムシ、オオモンクロナガカメムシ)の生育や生存率について調査を行った。その結果、解明された遺伝子の欠損株はホソヘリカメムシ(腸内[細胞外]共生)では野生株と同程度の共生能力を有していたが、ヒョウタンナガカメムシ類(細胞内共生)において特異的に共生不全を起こすことが明らかとなった。さらに、遺伝子相補実験を行ったところヒョウタンナガカメムシにおける共生能力が復活したことから、この遺伝子が細胞内共生に極めて重要な役割を果たすことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ホソヘリカメムシへの共生には影響を及ぼさず、ヒョウタンナガカメムシへの共生に特異的に影響する共生細菌側の遺伝子を特定することに成功し、その遺伝子変異株および遺伝子相補株を作成し感染実験を行う事で、細胞内共生の成立に果たす当該遺伝子の決定的役割を詳細に解明することに成功した。最も重要な達成目標である細胞内共生関連遺伝子の特定に向け、計画以上に研究が進んだと言える。
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今後の研究の推進方策 |
特定された共生細菌側の遺伝子が、どのようなメカニズムで細胞内共生の成立・維持に役立っているのか解析を行う。これまでにホソヘリカメムシとヒョウタンナガカメムシ類の発現遺伝子比較解析の結果より、細胞内共生で特異的に発現する抗菌タンパク質が見つかってきており、これら遺伝子の関与が示唆される。次年度以降は、これら細胞内共生で特異的に発現する遺伝子をターゲットにRNAiを行い、細胞内共生の成立・維持に関わるメカニズムの解明を行う。共生細菌側の遺伝子変異株の感染実験と組み合わせることで、本年までに明らかとなっている共生細菌側の遺伝子の機能に迫ることができると期待している。
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