研究課題/領域番号 |
20H03305
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中山 卓郎 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (70583508)
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研究分担者 |
矢吹 彬憲 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋生物環境影響研究センター), グループリーダー (20711104)
野村 真未 山形大学, 理学部, 助教 (40770342)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2020年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | 微生物多様性 / 共生 / 原生生物 / メタバーコーディング / ゲノム縮小進化 / シアノバクテリア / ゲノム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
海洋微生物には真核生物である真核微生物と原核生物である原核微生物が存在するが、真核微生物に潜在(共生)する原核微生物はこれまでの研究の中で見逃されてきたことが、近年の研究で示されている。このような「見逃されてきた」微生物の多様性および特性を把握することは地球生態系を包括的に理解する上で急務であると考えられる。 本研究では、原核微生物(真正細菌・古細菌)をターゲットとしたメタバーコーディングおよびメタゲノム解析を、あえて真核細胞サイズのサンプルを対象として行うことで、そこに潜在する未知の原核微生物の多様性・生態学的機能の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度では主に、真核生物に共生するシアノバクテリアゲノムの解析を進めた。 前年度までにディノフィシス目渦鞭毛藻Citharistes regiusの共生シアノバクテリアについて、完全なゲノム配列の解読に成功していた。本年度ではこのゲノム配列についてアノテーションを行い、他のシアノバクテリアゲノムとの比較解析を行った。前年度までに得られていた環状のメイン染色体の塩基数は約1.9Mbpであった。ゲノムアノテーションの結果、このシアノバクテリア(以下CregCyn)のゲノムには1,658のタンパク質遺伝子が存在することが明らかとなった。また、CregCynには上記染色体の他に17のタンパク質をコードする17kbpのプラスミドが付随することが判明した。 先行研究において、別のディノフィシス目渦鞭毛藻であるOrnithocercus magnificusの共生シアノバクテリア(以下OmCyn)のゲノムが解析されている。CregCynとOmCynの系統的関係を調査するために、他の自由生活性シアノバクテリアも含めた多遺伝子系統解析を行ったところ、CregCynはOmCynと同様に海洋Synechococcusの系統に属することが示された一方、それぞれの共生シアノバクテリアは海洋Synechococcus系統内の明らかに異なる内部系統に起源を持つことが明らかとなった、それぞれの共生が別の由来を持つことが強く示唆された。 他のシアノバクテリアとの比較ゲノム解析により、CregCynはOmCynは異なる起源を持つが、OmCynと同様にゲノム縮小を起こしていることが明らかとなった。相同タンパク質の比較解析により、CregCynとOmCynのゲノム縮小は、縮小の程度が類似しているのみならず、失われた遺伝子の機能にも高い類似性が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渦鞭毛藻共生シアノバクテリアゲノムの比較ゲノム解析を予定通り遂行し、Citharistes regiusの共生シアノバクテリアCregCynの進化的な特性を推定することに成功した。メタゲノムデータを用いたCregCynの生態的特徴の推定にも既に着手しており、概ね順調な進展であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はCitharistes regius共生シアノバクテリア(CregCyn)のゲノムについて、さらに詳細な比較ゲノム解析を行い、CregCynとOmCynの進化的な収斂および差異を確認する予定である。これにより原生生物共生シアノバクテリアにおける進化原理の抽出を試みる。さらに、既存のメタゲノムデータを参照しCregCynのゲノムに対応する配列がどのような環境にどの程度出現するかを確認することによって、CregCynの生態的特徴を調査する。さらに前年度に配列を取得したCregCyn以外の共生シアノバクテリアについても順次解析を進めていく。
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