研究課題/領域番号 |
20H03309
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
塚越 哲 静岡大学, 理学部, 教授 (90212050)
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研究分担者 |
鈴木 雄太郎 静岡大学, 理学部, 准教授 (50345807)
中尾 有利子 日本大学, 文理学部, 准教授 (00373001)
山田 晋之介 国際医療福祉大学, 医学部, 助教 (30772123)
蛭田 眞平 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (80624642)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2020年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 貝形虫類 / 節足動物 / 感覚受容器官 / ポア・システム / 多様性と進化 / 感覚受容器 / 貝形虫 / 進化 / 環境との応答 / 感覚器官 / 感覚受容 / 多様性 |
研究開始時の研究の概要 |
貝形虫類がもつ感覚器官,ポア・システムは,形態的に多様で,かつ化石として保存され,現在と過去の比較が可能である.これについて以下の点を明らかにする. Ⅰ)外部および内部形態から,ポア・システムを分類・類型化し,系統ごとの共有について網羅的にサーベイする.Ⅱ)個体発生を経たポア・システムの形態,数,分布位置の変化を見る.Ⅲ)生息環境の違いに対するポア・システムの挙動を考察する.Ⅳ)系統関係から,ポア・システムがどのように進化してきたのかを追跡し,大量絶滅前後の挙動等も把握する.Ⅴ)機能的視座を加え,外部形態と機能の関連性を明らかにする.Ⅵ)貝形虫類の感覚受容の進化を時空的にとらえる.
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研究実績の概要 |
(1)内湾性貝形虫類Bicornucythere属の形態的多様性と分類に関する研究 Bicornucythere 属は日本近海の内湾泥底に広く分布しており、日本においてはB. bisanensis 1種のみが報告されていた.本研究では本属の種について個体群レベルで軟体部,特に雄の交尾器の形態を精査し,B.bisanensisには4つの形態群があり,かつ複数のパーツを共有して形質の連続性を保っていることがつきとめられた.またこれとは別に,有明海から1種を新種B.misumiensisとして報告した(Nakamura & Tsukagoshi 2022).またB.bisanensisの雄交尾器に見られた形態群は,背甲に分布するポア・システムの分布様式にも反映されている一方,雌の交尾器やポア・システムには雄に見られるような形態群は見いだせなかった.B.bisanensisの雄個体間にはメスをめぐって交配行動の際にヒエラルキーが存在することが知られており,雄交尾器に見られる種内の形態群はこれを反映した可能性があるとして議論した. (2)湧水性属貝形虫類の微小分布に関する研究 静岡市清水区の日本平運動公園と同葵区梅ケ谷の滝において貝形虫群集組成(種組成)と個体数密度について研究を行った.前者は水平面で,後者は垂直面で試料採取を行い,同じ湧水環境であっても,両者の群集組成が全く異なることが明らかにされた.また,両者とも水流の中心や直近ではほとんど生息せず,水流の中心から離れた場所に生息することも明らかにされた.前者では,水流からの距離と個体数密度を定量化し,水流の影響が及ぶ限界に近い周辺部分で特に個体数密度が高いことが確認され,また堆積物中のクロロフィルaの量には依存しないことも確認され,基質の安定度などに依存している可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感覚子孔の分布と雄交尾器からみた形態群と感覚子孔(ポアシステム)からみた形態群の対応関係が明らかにされ,一方でメスにはこのような対応関係がないことも確認された.対象種独特の雄個体間ヒエラルキーに言及するなどの成果を上げた. 半陸生貝形虫類についても,遺伝子情報から太平洋沿岸から日本海沿岸まで1種として遺伝的交流があることが示唆された.開殻システムとポアシステムについても新たな進展がみられつつある.
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今後の研究の推進方策 |
背甲表面に開口する感覚子孔(ポアシステム)だけでなく,Podocopida貝形虫類では「痕跡的」な存在である尾叉(furca)の形態と機能に着目し,感覚受容の観点から尾叉の新しい見方を確立してゆく. 間隙性貝形虫類の中には,外部形態が単純化したために分類的位置の判定が困難な分類群が多く存在する.今後はそのような分類群について,ポアシステムの分布配置と遺伝子データの双方を使って,分類学的位置を解明してゆく.
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