研究課題/領域番号 |
20H03325
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 東京大学 (2023) 京都大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
鈴木 俊貴 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (80723626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2020年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | コミュニケーション / 言語進化 / 鳥類 / 指示性 / 構成性 / 言語 / 動物言語学 / 音声コミュニケーション / 情報伝達 / 動物行動 |
研究開始時の研究の概要 |
言語の進化を解き明かすことは現代科学における大きな課題のひとつである。ヒトの言語表現は他の動物のコミュニケーションと比べて逸脱して複雑であり,それらの単純な比較から言語の起源や進化に迫ることは難しい。しかし,言語を構成する下位機能に着目すれば,動物を対象とした比較研究も可能となる。これまでの申請者の研究から,特異な音声を用いて対象物を指示する能力や異なる音声を組み合わせる文法能力が,シジュウカラ科鳥類において独立に進化していることが明らかになってきた。本研究では,認知科学や言語学の観点を取り入れた行動実験,DNA解析,系統情報を考慮した種間比較から,これらの言語機能の適応・進化機構を解明する。
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研究実績の概要 |
言語の進化を解き明かすことは現代科学における大きな課題のひとつである。ヒトの言語表現は他の動物のコミュニケーションと比べて逸脱して複雑であり、それらの単純な比較から言語の起源や進化に迫ることは難しい。しかし、言語を構成する下位機能に着目すれば、動物を対象とした比較研究も可能となる。 これまでの研究代表者の研究から、① 特異な音声を用いて対象物を指示する能力(指示性)や ② 異なる音声を組み合わせる文法能力(構成性)が、シジュウカラ科鳥類において独立に進化していることが明らかになってきた。本研究では、認知科学や言語学の観点を取り入れた行動実験や系統情報を考慮した種間比較から、どのような生態的・社会的背景で、これらの言語機能(指示性・構成性)が適応・進化したのか解明することを目的とする。本研究が完成した暁には、言語の進化を生態学的根拠のもと議論することが可能となり、生物学領域に留まらない幅広いインパクトが期待される。 当初の計画では、国内外の複数のシジュウカラ科鳥類種を対象に、言語機能に関する大規模な比較研究を展開する予定であったが、新型コロナウイルス蔓延の影響で、海外への渡航・調査が困難な状況となってしまった。そこで、本研究では、日本国内に生息する森林性鳥類を対象に、言語機能に関するより詳細な行動実験を行い、本課題を進展させることとした。本年度は、研究代表者及び1名のポストドクターと共同で、音声・動画データの解析や次年度のための予備実験、巣箱個体群の維持管理などを行なった。音声の指示性や文法構造の種間差について多くの新しい知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度の本予算を用いて下記の研究を実施した。 1)指示性の検証 2021年5-6月および2022年4-6月(2021年度繰越分)に長野県でシジュウカラ科鳥類を対象に行った野外実験のデータを解析した。本実験では、3台のビデオカメラによる行動追跡及び音声の録音を行ったため、その解析には多くの時間を要する。まだ解析の最中ではあるが、本予算で雇用中のポストドクターと共同で作業を進めることで、記録者(観察者)バイアスを考慮しながら効率的に作業を進めることができている。来年度に予定している行動実験(後述)に向けた準備も行なった。7月に予備実験を行ったほか、3月には巣箱の清掃・設置作業を行なった。 2)音声構造の種間比較 2021年に得た警戒音声や逃避音声のデータの分析を進めた。具体的には、発声頻度や音響構造、文法構造に注目し、系統関係を考慮した種間比較法を用いて分析し、音声の指示性や構成性の進化要因を推定した。また、オンライン上にアップされた録音や国外の共同研究者の録音データをもとに、鳥類の音声構造の多様化の道筋を解析した。音声の分類は機械学習を用いて行った。本手法では、どのような状況で発せられた音声であるか詳細に評価できず、各音声の意味や機能を推測することは困難であるが、シジュウカラ科鳥類約60種の音声構造の網羅的な比較研究、機械学習を用いた音声の分類といった点で新規性が高く、遂行する意義が十分にあると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)指示性の検証 今後も2021年5-6月および2022年4-6月(2021年度繰越分)に収集した動画データ及び音声データの解析を進める。また、解析から音声が他個体の行動に影響を与えることが示唆された種については、音声再生実験(警戒音声、コントロール音声)や研究代表者が新しく考案した認知実験(音声によってその指示対象の視覚的検出が高まるかを検証する実験;Suzuki 2018 PNAS)を行い、音声の指示性を検証する。 2)音声構造の種間比較 野外研究で得た音声データ及びオンラインデータベースから得たシジュウカラ科鳥類の音声を対象に、音声解析・種間比較を継続して進めていく。音声の分類は機械学習を用いて行う。行動や形質の進化は系統的な制約を受けるので(近縁種間は祖先形質を共有しやすい)、種間比較により進化要因を検出するには系統関係を考慮する必要がある。系統情報を加味した統計モデリングによって音響特徴や文法構造がどのような生態要因や社会要因のもとに進化したのかを推定する。 3)言語機能の適応・進化理論の構築 研究成果を論文にまとめる。また、動物をモデルに言語機能の適応進化を研究するための理論的枠組みを構築し、総説の執筆やシンポジウムの開催を通して進化言語学に還元する。 4)進化基盤の解明 データ解析の結果から、近縁種間で言語機能(指示性や構成性)の違いが確認された場合、それらを生み出す遺伝的基盤についても探究したい。野外研究において採取した鳥類各種の血液からDNAを精製し、次世代シーケンサーを用いて各種の塩基配列を決定する。スズメ目鳥類では、音声学習や認知能力に関与する遺伝子(FOXP2、EGR1)が同定されているので、まずはこれらの領域をターゲットとして種間で塩基配列を比較し、どのような変異がカラ類において言語機能(指示性・構成性)を可能にしたのか推定する。
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