研究課題/領域番号 |
20H03335
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45060:応用人類学関連
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
小崎 智照 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (80380715)
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研究分担者 |
高雄 元晴 東海大学, 情報理工学部, 教授 (90408013)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | LED / 瞳孔反応 / ヒト / 動物 / ipRGC / 内因性光感受性網膜神経節細胞 / 点滅光 / 概日リズム系 / 網膜電位 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトの生体リズムは光を最大の同調因子としており、夜間の光はメラトニン分泌を抑制する。このような夜間照明による生体作用は不眠症や乳がんの発生率を高める可能性が指摘され、我々の健康リスクを高める。最近、急速に普及しているLED照明は、蛍光灯などこれまでの光源とは異なり、常に一定で発光している「定常光」と視覚的に点滅を感じることのない「高速点滅光」の2種類が存在する。これまで本研究代表者は、定常光とは異なる作用を有する高速点滅光特性をいくつか明らかにしてきた。しかし、その特性には不明な点が多いことから、本研究では生体へ作用する光の点滅条件についてより詳細に検証する。
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研究実績の概要 |
本年度の代表者は日中(8:00~16:00)に明環境(600lx)もしくは暗環境(<3lx)で過ごした後の異なる波長の点滅光に対する網膜電位を測定した。その結果、内因性光感受性網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive retinal ganglion cell:ipRGC)が反応しない長波長の点滅光に対する網膜電位の振幅は日中の光条件間で差がなかったものの、短波長に対する網膜電位は日中の明環境後に有意に低下した。これはipRGCが日中の明環境に対して順応(明順応:光感受性の低下)したことを示唆している。これより、点滅光に対する網膜電位にipRGCの活動が反映されていることを改めて確認した。また、分担者の実績としては、本研究を通じて開発したmicroERG法を用いてマウス網膜からipRGCから1時間以上にわたって安定して光反応を記録できる手法を確立した。この結果、ipRGCは最低でも1時間は光に対して反応し続けるとともに、1Hzから100Hzの点滅光に対して反応を維持することもわかった。以上より、ipRGCは網膜において輝度センサーとして機能していることが確かめられた。また1Hzから100Hzという幅広い周波数の点滅光に対して、ipRGCが長時間にわたって反応を維持し続けられるという報告はこれまでないばかりか、錐体や桿体といった他の視細胞のみならず他の網膜の細胞でも例がない。今後、このような優れたipRGCの時間応答特性と脳機能の関わりについて明らかにする必要があろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の代表者の成果より、点滅光に対するヒトの網膜電位にipRGCの活動が反映されていることを改めて確認することができた。この実験は被験者を長時間拘束した大掛かりなものであった。また、分担者の成果より、マウス網膜のipRGCを用いたmicroERG法により、ipRGCが1Hzから100Hzの点滅光に対して最低でも1時間も反応を維持することも明らかにした。これらの研究成果を国内学会での発表4件、国際学会での発表1件として報告した。さらに、本採択課題以前から取り組んでいるメラトニン分泌を評価した研究成果についても国際学術雑誌の論文として掲載することができた。以上より、本年度の進捗状況は順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
代表者はこれまでの点滅光に対する網膜電位よりipRGCの光応答特性について検討してきた。また、これらの網膜電位にはipRGCの活動が反映されていることも示唆している。しかし、ヒトの網膜電位にはipRGC以外の視細胞の活動も含まれていることは事実であり、網膜電位から得られた結果をそのまま応用するには限界がある。そこで、今後はipRGCの支配を受けていることが知られている瞳孔の対光反応に着目し、網膜電位で得られてきた結果の再現性を検討していく。また、分担者はこれまで明らかにした高速点滅光に対するipRGCの長時間にわたる反応が、どのようなイオンチャンネルが未だ不明なため、その特性について検討する。
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