研究課題/領域番号 |
20H03359
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
|
研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
川口 泰雄 玉川大学, 脳科学研究所, 研究員 (40169694)
|
研究分担者 |
窪田 芳之 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 准教授 (90192567)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2022年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2020年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
|
キーワード | 前頭皮質 / 錐体細胞 / 運動学習 / 皮質間投射 / 光顕電顕相関 / FS細胞 / 振動 / GABA |
研究開始時の研究の概要 |
大脳新皮質の多数の領野・細胞の統合的な活動によって、ヒトは状況に応じた適切な行動を選択します。この統合的操作は高次前頭皮質から他の領野へのトップダウン信号と呼ばれる司令と、各領野内での複数の細胞の同期的活動によって実現されると考えられます。本研究は齧歯類の行動に関係する皮質領野間のトップダウン信号と同期的活動の元になる局所振動の機能的関係を調べることで、新皮質の情報処理の理解に貢献します。
|
研究実績の概要 |
前頭皮質機能を発現する重要な構造である、トップダウン投射と振動生成回路をニューロンタイプからボトムアップに理解するために、以下の実験・解析を行った。 (1) 二次運動野(M2)から一次運動野(M1)へ投射する終脳投射(IT)細胞の多様性: これまでに、M2からM1の1層への軸索終末が5層錐体細胞樹状突起タフトへシナプスすることや、M2からM1へトップダウン投射する錐体細胞は主に3層と5層にあることを明らかにした。本年度は、M2の5層IT細胞のM1の1層投射様式を解析した。5層IT細胞に選択的にCreを発現する遺伝子改変マウスを用いて、蛍光標識したM2-5層IT細胞の軸索は1層に分布していた。M1皮質表面に逆光性トレーサーを適用すると、M2の5層IT細胞の6割ほどが標識され、5層IT細胞軸索の層分布に多様性があることが考えられた。転写因子の一つであるER81(ETV1)が5層IT細胞の一部に発現していたので、1層投射とER81発現の関係を調べた。その結果、M1の1層へ投射する5層IT細胞がER81を発現することが分かった。 (2) 前頭皮質の振動生成回路の同定: これまでに、前頭皮質5層錐体細胞のサブタイプである錐体路(PT)細胞を振動成分のない漸増光刺激で選択的に興奮させると、ベータ/ガンマ帯域の振動が引き起こされ、この誘発にはパルブアルブンFS細胞との結合が必要であることを見つけた。これまでに明らかにした、前頭皮質5層のPT、IT、FS細胞の内因的特性、同種間・異種間の化学シナプス特性、FS細胞の電気結合特性を使って、局所回路モデルを作った。このモデル回路でPT細胞を漸増刺激するとベータ/ガンマ振動が誘発されたのに対して、IT細胞刺激では振動が起こらなかった。前頭皮質の振動誘発におけるPT細胞の重要性が実験的にも計算論的にも明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
皮質間トップダウン投射と皮質局所振動の機能を理解するために必要な、前頭皮質間投射細胞や振動誘発回路の実体を明らかにすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
二次運動野から一次運動野錐体路細胞へのシナプス結合の選択性や可塑性を明らかにするとともに、一次運動野へ投射する錐体細胞サブタイプの局所結合様式を解析し、皮質間トップダウン機能の理解を深める。
|