研究課題
基盤研究(B)
1980年代にエイズの世界的流行が始まった頃、これは死の病であった。その後に原因ウイルスHIVに対する薬が多数開発され、エイズ発症抑制が可能となった。しかし体内に潜むHIVを完全に除去することはできない。この完全治癒が、現在のエイズ治療における最大の目標である。研究代表者らは、L-HIPPOと名付けた非天然型イノシトールリン脂質がHIV放出を抑制し、感染細胞にHIVを閉じ込めアポトーシスを誘導するユニークな現象を報告した。HIV感染細胞の除去を目指してこの現象を臨床応用まで発展させるため、本研究では細胞膜に透過しやすく改変したL-HIPPO誘導体の構造を最適化し、医薬品候補を創出する。
我々は、人工イノシトールリン脂質L-HIPPOがHIVのGagタンパク質MAドメインに結合してウイルス放出を抑制し、感染細胞にHIVを閉じ込めアポトーシスを誘導する現象を報告した。本研究では、L-HIPPOのプロドラッグ化と構造最適化を目指した。まずこのプロドラッグ体を合成し、HIVの放出抑制や感染価低下に働くことを明かにした。また、Gag MAドメインとL-HIPPOとの複合体の構造解析を目指した。これに関しては成功に至っていないが、MAとL-HIPPOの一部であるIP6との結晶構造解析に成功した。この構造を基に、MAと強く結合するL-HIPPO誘導体の構造を推定した。
現在のエイズ治療の最大の目標は、患者体内からのHIV潜伏感染細胞の除去である。ここで取り組む感染細胞にアポトーシスを誘導する現象は、この目標達成に繋がる新しい概念をもつエイズ治療法となる。また用いる化合物は、人工イノシトールリン脂質である。これまでイノシトールリン脂質は、特に負電荷を多くもつことから医薬品のリードとして考えられて来なかった。今回は負電荷を多くのプロドラッグで覆うことでその欠点を克服したが、これは新しい医薬品の創製に繋がる。またHIV Gag MAドメインとIP6の複合体構造を解いたが、これにより生体分子IP6によるHIV放出の制御機構を新たに提唱することができた。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 7件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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