研究課題
基盤研究(B)
マラリアは感染者数2億人、死亡者数40万人に上る非常な脅威を有する感染症であり、マラリア治療薬(抗マラリア薬)はマラリア制圧に向けた複雑なパズルを解く必須のピースである。これまで、抗マラリア薬の薬理作用は直接マラリア原虫を殺滅することであり、マラリア原虫の薬剤耐性は薬剤と原虫の2者での現象であると考えられてきた。しかし、私たちは抗マラリア薬の薬理作用発現には宿主因子が必須であるとの知見を得た。本研究ではこの知見に基づき、抗マラリア薬の生体内での作用機序における宿主免疫系の役割について検証するとともに、生体内での抗マラリア薬耐性原虫の出現機序とその薬剤耐性機構についても検証することを目的とする。
マラリアはマラリア原虫の感染によって発症する三大感染症の一つである。マラリア治療薬(抗マラリア薬)はマラリア制圧に向けた必須のピースであるが、薬剤耐性の出現が問題となる。抗マラリア薬は生体内でも直接マラリア原虫を殺滅することでマラリアを治癒していると考えられているが、私たちの研究から生体内での抗マラリア薬の薬理作用には宿主免疫機構が関与していることが明らかとなった。特に抗マラリア薬として最もポピュラーなクロロキンのマラリア治癒作用には宿主免疫グロブリンが大きく関与していること、また免疫グロブリンを産生するB細胞そのものはクロロキンの作用に対して負の影響を持つことが示唆される結果を得た。
私たちは本研究から、抗マラリア薬の生体内での薬理作用には宿主免疫機構が大きく関与しているとの知見を得た。この知見から、抗マラリア役にてマラリアを治療する際には患者の免疫機構が十分に維持されている必要があることが示唆された。一方、マラリア流行地では栄養不全や若年者など免疫機構が十分ではないものが感染する。このような患者では抗マラリア薬が十分にその効果を発揮せず、感染が遷延するのではないかと推察される。感染の遷延と抗マラリア薬の持続的使用によって薬剤耐性原虫の出現が危惧される。そのため、抗マラリア薬を使用する際にはこれまで以上に患者の免疫機構の状態に留意し、状態によって治療法を選択する必要がある。
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