研究課題
基盤研究(B)
結核菌は、マクロファージの活性化と殺菌能を抑制して細胞内寄生を成立させる。これに関与する病原因子の一つ、Zmp1は、感染防御に重要なサイトカイン、IL-1βの産生を抑制する。申請者らは、Zmp1がミトコンドリア電子伝達系を標的とすること、ミトコンドリア障害を誘発することを見出した。本研究は、この知見を基盤に、1.Zmp1によるミトコンドリア障害と免疫抑制の分子機構の解明、2. 結核菌由来新規ミトコンドリア標的分子の同定とその病原性の解明、3.ミトコンドリア機能修復による新規抗結核免疫療法の開発、を目指す。
結核菌の病原因子Zmp1 は、インターロイキン (IL)-1β 産生を抑制してファゴソーム成熟を停止させる。その分子機構解明のため、私達はZmp1の標的分子を検索しミトコンドリア呼吸鎖複合体Iの構成分子GRIM-19を同定した。GRIM-19 欠損マクロファージでは、NLRP3 インフラマソーム活性化刺激に対するIL-1β 産生が低下し、NLRP3インフラマソーム活性化を誘導するミトコンドリア活性酸素種 (mROS) の生成も消失していた。 これらの結果は、Zmp1 が GRIM-19 への結合を介して mROS 生成を抑制し、NLRP3 インフラマソーム活性化を阻害することを示唆している。
結核は、いまだに人類の健康に対する大きな障害であり、新たな免疫療法とワクチンの開発が待たれている。しかし、これまで行われてきた免疫療法の試みは大きな成果を上げておらず、これは結核菌が産生する病原因子が積極的に免疫系による感染マクロファージの活性化を抑制しているのがその一因であると私達は考えている。この点を解決するためには、結核菌が免疫を抑制する分子機構を解明し、それに対して阻害作用を有する分子標的薬を開発することが重要と考えている。今回の研究で結核菌Zmp1の宿主標的分子を同定したことは、Zmp1分子標的薬の設計とスクリーニングへの第1歩として、社会的意義があるものと考えられる。
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FASEB Journal
巻: 36 号: 1
10.1096/fj.202101074rr
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