研究課題
基盤研究(B)
本研究は個々のがん患者の多様性を捉えるための最適な方法は何か、どうすれば個人個人に対して最適な治療法を提案できるかという問いに対して、リン酸化プロテオーム解析とバイオインフォマティクス解析を用いて、がんシグナルパスウェイとパスウェイ上のキナーゼ活性を網羅的に定量することで、がんの多様性を理解し、患者の層別化と個人個人に対して最適な治療法の提案をするものである。特に患者層別化が進んでいない胃がん・大腸がんに対して、より生体内の状態に近いがん生検組織またはPDX移植腫瘍を解析対象とする。
本研究では、患者のがん生検組織や同一患者の時系列の手術切除組織を用いて、大規模なリン酸化プロテオーム解析とバイオインフォマティクス解析を行い、患者の層別化と個人個人に対して最適な治療法の提案をすることを目的とした。その結果、胃がんを3つのサブタイプ)に分類することおよびそれぞれのサブタイプに対して特異的な治療法を提案することに成功した。また、大腸がんの原発巣と肝転移組織のリン酸化プロテオーム解析から、予後不良群で活性化するキナーゼおよび治療薬としてのキナーゼ阻害剤を見出すことができ、シグナルプロテオミクス創薬の概念実証に成功した。
本研究の学術的意義は、大規模なリン酸化プロテオーム解析とバイオインフォマティクス解析を組み合わせることにより、がんシグナルパスウェイとパスウェイ上のキナーゼ活性を網羅的に推定することができ、がんの多様性をシグナルパスウェイの観点から理解できるようになったことである。その結果、患者の層別化を可能とし、また、個々のがん患者のシグナルパスウェイの活性化状態から治療法の提案を可能とすることができた。すなわち、シグナルプロテオミクス創薬が精密医療・個別化医療の実践に有用であることを示した点が本研究の社会的意義である。
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