研究課題/領域番号 |
20H03557
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51020:認知脳科学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
保前 文高 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (20533417)
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研究分担者 |
橋本 龍一郎 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (00585838)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2021年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 脳の形態形成 / 構造機能連関 / 脳回 / 発達 |
研究開始時の研究の概要 |
大脳皮質の脳溝と脳回は、折れたたみの凹部と凸部として定義される。成人では、脳溝の皮質が脳表面積の6割を占めることが報告されており、脳溝の特徴を明らかにすることは、脳を知る上で必須である。その一方で、凹部を超えた定義は定着しておらず、脳溝の分類も一貫していないという課題がある。本研究は、脳溝を形成する皮質周囲の神経線維束に注目して、脳溝を構造、機能、発達の側面から定義することを目的とする。
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研究実績の概要 |
2022年度は、2021年度までに行った構造画像の解析をもとにして、拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging、DTI)と安静時fMRI(resting-state fMRI、rs-fMRI)のデータを解析する計画で検討を進めていた。その過程で、37週齢以降の構造画像を出生時週数に分けて解析したところ、在胎週数が37週よりも早くに生まれた早産児と満期産児ではshape index(Koenderink and van Doorn, 1992)と皮質厚の関係が異なることが明らかになり、2023年度に繰越をして再度解析を行うことにした。shape indexの値によって脳表を7つの形態に分類した場合に(-1から1となる順に、spherical cup、rut、saddle rut、saddle、saddle ridge、ridge、dome)、早産児と満期産児のどちらでも、全体としては週数とともに平均値が大きくなる傾向があった。また、7つの形態それぞれにおいて、皮質厚の平均値を求めると、shape indexの値が大きい領域、すなわち、凸部のほうが、凹部よりも皮質厚が厚い傾向が認められたが、shape indexの値が最も大きいdomeの領域では撮像時週数が若い時には、最も厚いわけではなく、成人で報告されている結果とは一致しないことを見いだした。さらにこの領域が最も厚くなるタイミングは、早産児と満期産児で異なっていた。7つの形態それぞれの領域で髄鞘化の程度を検討すると、shape indexの値が最も小さい凹部にあたるspherical cupでは早産児と満期産児のどちらにおいても髄鞘化の程度が低いことが明らかになった。このように、脳の形態形成において、出生時週数によって相違点と共通点があることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DTIとrs-fMRIの解析を行う計画であったが、出生時週数によって皮質厚と形態の関係に違いがあることを見いだしたために、早産児と満期産児に分けて再解析を行った。shape indexに加えて、凹凸の程度を表すcurvednessを指標として導入することで、特に37週以前の発達を検討することができるようになった。この検討を進める過程で、the Developing Human Connectome Project(dHCP)の3rd Data Release(http://www.developingconnectome.org/data-release/third-data-release/)にアクセスして、これまでに行ってきた2nd Data Releaseのデータと同様の手続きで解析をしたところ、2つのデータベースの間で結果が異なっていた。このため、2nd Releaseと3rd Releaseのどちらにおいても前処理が行われて公開されている構造画像データに限定して再解析を実施したが、その解析においても結果が異なることが判明した。特に大脳皮質表面を再構成しているデータにおいて皮質の厚みや表面の曲率の平均値や分布に違いがあり、3rd Releaseのデータでは全体的に厚みが増していた。この違いは、本研究で行っている解析には大きな影響を及ぼすことが懸念される。この結果を受けて、相違の源を探るために個人ごとのデータに戻って前処理の結果を見直すことにして、最終年度の繰越を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度末に4th Data Releaseの公開が告知されたため(https://biomedia.github.io/dHCP-release-notes/index.html)、このデータにアクセスするとともに、2nd Release、3rd Releaseと比較検討をした上で、早産児と満期産児の構造画像の解析結果をまとめる。4th Data Releaseでは、胎児のデータが含まれるため、早産児と胎児の比較をすることも可能となり、これまでに行っている受胎後週数ごとの検討を出生前と出生後に拡張することができるようになる。また、BrainVISA、infant FreeSurfer、pyBabyAFQを用いた解析を進めることについても検討している。当初計画していた通りにDTIのデータを用いて、凹部の灰白質のニューロンの線維束が結合する先と、凹部の灰白質直下の線維束がどのような領域間を結合しているかに焦点を当てて、皮質の曲率によらずに凹部の分類をすることで、脳溝を形成する皮質の特徴を明らかにする研究を進める。また、成人においては、機能に関する検討をしてきており、乳児期のrs-fMRIデータと比較して構造機能連関に関する結果としてまとめるように進める。
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